第6章 運動会
カラ松side
頭を冷やすついでにトイレに向かった。
トイレを済ませ、手を洗って冷たい水で顔を洗う。
タオルで滴る水を拭きながら外に出ると呼び止められた。
「頭は冷えたァ~?」
トイレの入り口の横で壁に背を預けるおそ松が居た。
「・・・さっきはすまなかった」
いいっていいってと言いながらおそ松は親指で喫煙スペースをクイクイと指す。
俺は無言で喫煙スペースに足を向けた。
おそ松は煙草を箱から少し飛び出させると俺に差し出す。
俺は礼を言って一本取って咥える。
おそ松は箱から直接口にくわえて一本引きずり出し、火をつけてライターを俺に投げてよこす。
俺は自分の煙草に火を着けると同じように投げて返した。
大きく吸って胸のざわめきを鎮めてくれと煙を肺に流し込む。
そして、煙と共に外に出すつもりでゆーっくりと煙を吐き出した。
するとおそ松がゆっくり口を開く。
「あの男の人と何かあったの?」
「いや、何もないんだ」
「ちょっと喋ったくらいで、触られたくらいでそんなんだったらさ」
「わかっている!!」
俺は声を荒げた。
そして再びたっぷり煙草を吸うと煙と共に吐き出す。
「何故かあいつだけはダメなんだ!他の奴ならこんな風にはならない!だけど、あの男だけは初めて見た時から許せないんだっ!自分でも何故だかわからない!」
おそ松は煙草を消して俺の隣に来ると肩を組んできた。
そして溜め込んでいた煙を俺の顔目掛けて吐き出す。
「げほげほっ、何をする!?」
「何かムカついたっ!」
「はぁ!?」
煙草を消しながら俺は声を上げる。
「一松を困らせない程度にしろよな!ほら、騎馬戦終わっちまうぜ!」
それだけ言っておそ松はテントに戻って行った。
自分の感情を否定されなかったことに安堵する。
ありがとうおそ松・・・
俺は言われた通り一松に迷惑をかけないよう感情はそのままにできるだけ胸の内に秘めておけるよう心を落ち着かせて一松の応援に向かった。