第6章 運動会
周りの騒がしい声に気が付いたのか一松兄さんの体がピクリと反応した。
そしてゆっくりと頭を上げる。
「フッ、お目覚めか?マイリルキテぶふゎっ!!」
強烈な一発がカラ松兄さんの顎にクリーンヒットした。
おそ松兄さんは「ほらな?」と言って腹を抱えて地面をバシバシ叩いていた。
開会式の後、子供たちの徒競走があり、その後が十四松兄さんの出場する障害物競走だ。
十四松兄さんの鉢巻きを締めてあげる。
「ありがトッティー!頑張ってきマッスルマッスル~!」
そう言って元気に入場門に走って行った。
障害物競走の後は少し間が開いてから僕の出る借り物競争、そのすぐ後に一松兄さんの出る騎馬戦がある。
午前の部はそれで終了だ。
そうこうしていると徒競走が終わり、十四松兄さんの出番がやってきた。
僕達は身を乗り出して十四松兄さんに声をかける。
「十四松っ頑張って!!」
「十四松兄さんっ、ちゃんとルール守ってよね!」
十四松兄さんは第一走者らしく入場してすぐにスタート位置に出てきた。
そして、僕達に向かってハッスルハッスルマッスルマッスルとお馴染みのポーズをとって見せた。
乾いたピストルの音と同時に走者四人が走り出す。
十四松兄さんは僕達に気を取られていたのか出遅れた様で、一つ目の障害物にビリで到着した。
麻の袋に両足を入れて飛びながら次の障害物まで向かうようだ。
他の三人が既に次の障害物へ向かう中十四松兄さんはようやく袋に足を入れた。
「っよいしょーーー!!」
グラウンドに大きな声が響き渡った。
会場の人達が何事かと声のした方を見ると先ほどまでそこにいた十四松兄さんが居ないことに驚く。
ずっと十四松兄さんを見ていた僕達は可笑しくて仕方なく、笑い転げていた。
十四松兄さんはあの掛け声とともに一っ跳びで次の障害物に到着していたのだ。
他の走者も後ろにいるはずの十四松兄さんが突然目の前に現れて驚いている様子だった。
お次は小麦粉の中から飴を探し出すようだ。
これまた鼻の利く十四松兄さんにはなんの障害物にもならなかったようであっさり小麦粉の中から飴を見つけ出してしまつた。