第1章 悪夢
翌日。
いつもはおそ松兄さんとチョロ松兄さん、カラ松とトド松、十四松と俺に分かれて登校することが多いが、示し合わせたように十四松がトド松を誘い家を出て行った。
朝が苦手で遅い俺を、十四松ではなくカラ松が待ってくれていた。
「一松、一緒に行こう」
「うん」
しばらく歩くと猫を埋めた河川敷が見えてきた。
「一松、お前猫が唯一の友達だって言ってたよな?いつも一緒に遊んでいた奴らは違うのか?」
俺は唇を噛んで涙をこらえて言った。
「猫を殺したのはあいつらだったんだ」
「なんだと?なぜそんなことをする必要があるんだ?」
「僕達六つ子が目立ってることが気に食わないんだよ。だから一緒に遊ぶことで嫌がらせするタイミングを見計らってたんだ」
カラ松はそうかと一言、それから黙り込んでしまった。
視界に入ったカラ松の拳にはこれ以上ないくらい力が入っているようだった。
教室のある三階に着くと俺とカラ松はクラスが違うので分かれた。
カラ松は十四松と同じ二組、俺は三組、残りの三人が一組だった。
教室に着くと端の方であいつらが集まってこちらを見て何か話しているようだった。
俺は気にしていない風を装って席に着く。
いつもより汚い机。
「え?」
俺は机の上に置いた鞄をどかした。
机いっぱいに何か書かれていた。
それは俺に対する誹謗中傷。
「一松!」
「一松にいさーん」
その声にはっと顔をあげた。
カラ松と十四松だった。
慌てて鞄を机の上に戻す。
しかし、鞄で机全体を隠すことはできずすぐにカラ松に見つかってしまった。
「おい、一松鞄どけろ」
「な、何でっ」
「どけろっつってんだろ!!!」
「ひっ!」
カラ松が突然声を荒げた。
俺は、否、クラス全員が肩を震わせた。
それでも俺が鞄をどけないのでカラ松は乱暴に鞄を机から払い落とした。
「何これ・・・ひどい!!」
十四松が俺の鞄から消しゴムを取出し必死に消している。
”汚い”
”キモイ”
”ゴミ屑”
”目障り消えろ”
”猫の死骸触るとか気色悪い”
消されていくのに脳裏に残って消えそうになかった。
思考が停止する中、カラ松が静かに聞いて来る。
「お前と遊んでた奴らは?」
俺はあいつらの方を見た。
カラ松は俺の視線を追うと歩き出した。