第5章 十五夜のうさぎ
「「・・・・・・・・・・・・」」
「何二人で見つめあっちゃんってんの?」
おそ松兄さんがニヤニヤとカラ松と俺の顔を覗き込む。
俺ははっとして恥ずかしくなって、手に持っていた団子を思わずカラ松に向かって投げつけた。
団子はカラ松の口の中に吸い込まれるように入った。
「・・・・・・・・・う、うまいぃぃいい」
カラ松は何故かだばだばと滝のような涙を流しながらおそ松兄さんのパーカーを攫んで去って行った。
「何だったの?」
「さぁ?」
トド松とチョロ松兄さんも訳が分からないと苦笑いしていた。
そうやって団子を作り終わり、十四松が帰ってきたところでいつもより早いが明るいうちに俺達は銭湯に向かった。
うちに帰ると寝巻に着替え、皆が屋根の上に集合する。
団子やススキや酒、銭湯の帰りにツケで買ってきたチビ太のおでんも並び、屋根の上は結構窮屈だ。
だけど、それが逆にわいわいと楽しい空間にしていく。
酒も回って気持ちよくなった頃だ。
カラ松が俺の隣に移動してきた。
「こうやって肩を寄せ合って飲む酒はうまいな一松」
カラ松が耳元で囁く。
「そうだね」
「一松、団子美味かったぞ!」
俺は照れ隠しに「もう聞いた」と返す。
すると、更に肩を寄せてきて耳に唇が触れるくらいの距離で再び囁かれる。
「一松のエプロン姿、エロくて正直やばかった・・・」
俺はカラ松を殴り飛ばした。
あの時泣いていたのは俺のエプロン姿に発情したけど我慢しなくちゃいけないから泣いていたということに俺は気がついたからだ。
屋根から転げ落ちそうになるカラ松をおそ松兄さんがとっさに攫む。
「一松、危ねぇだろ!?カラ松落ちちゃうところだったよ?」
「お前なんか落ちてしまえ!」
「え?落としてよかったの?・・・じゃぁ」
そういっておそ松兄さんは掴んでいたカラ松の手を離した。
「あっ、え!!あ゛ぁぁぁぁああああ!!!!」
ムーンライトの下でカラ松が奏でたのは絶叫だった。