第5章 十五夜のうさぎ
一松side
トド松の言葉に少しこれからの事を考えた。
確かにずっとここにいられるわけじゃない。
そうなったときリアルに想像できるのはカラ松が働いて俺が専業主夫という形だった。
カラ松はいつも俺の買い物に付き合って荷物持ちしてくれたり、キスもセックスも全部俺のペースに合わせてくれる。
でも、俺はあいつに何もしてやることができないと最近悩んでいた。
トド松とチョロ松兄さんに背中を押されて料理教室に試しに行くことになったのは正直願ったりかなったりだった。
唐揚げを作れるようになったらなんてことを考えていたら顔がほころぶ。
俺はぶんぶんと顔を振って考えを払いのけ、あんこを練る。
出来上がったあんこをトド松が器用に可愛いうさぎの形に形成していく。
「トド松器用だね、すごく上手い」
「うん、僕も驚いたよ、食べるのもったいないね!」
チョロ松兄さんも身を乗り出してまじまじと見ている。
トド松は「うふふ、そうかなぁ?ありがとう」と言いながら団子の生地であんこを包み楕円形に丸めて緑と赤の食紅で目と耳を描いていく。
俺は普通に丸い団子を作っているのに大きさが違ったり表面がぼこぼこしたりあんこが飛び出したりと上手くできない。
眉間にしわを寄せながら奮闘していると玄関の開く音がする。
「負けたあああああああ」
「帰ったぜ、ブラザー!」
パチンコで負けたおそ松兄さんと無理やり連れていかれたカラ松が帰ってきたらしい。
足音がバタバタとこちらへ向かってくる。
「ん、まだ団子作ってんの?」
「もうすぐできるところだよ」
おそ松兄さんが台所に来るや否や団子に手を伸ばす。
その手をすかさずチョロ松兄さんが叩き落とした。
「って~~~、良いじゃん一個くらいっ、ケチ!!」
そう言って再び手が伸びる。
「も~!カラ松兄さん、おそ松兄さんどっか連れて行って!こんなんじゃお団子なくなっちゃう!」
トド松の声に台所にやってきたカラ松と目が合った。
カラ松は固まったように俺を見ている。
俺も先ほどの唐揚げの事を思い出し顔が熱くなる。