第5章 十五夜のうさぎ
~おまけ~
一松side
カラ松が屋根から落ちた後、十四松が大丈夫でっか~と屋根の下を覗きこんでいる。
あんな酷い事されたのに普通に大丈夫だと下から返事が返ってくる。
その声を聴いてチョロ松兄さんが言った。
「カラ松ってさ、さながら逸話の月うさぎだよね」
「なにそれ?」
おそ松兄さんが酒をつぎ足しながら笑う。
聞かれてチョロ松兄さんは昔話を始めた。
「昔々あるところに仲良く暮らす猿と狐とうさぎが居たんだ。ある日三匹は食い倒れた老人に出会って、食べ物を取ってきて欲しいと頼まれた。そこで猿は木の実を、狐はお供え物を盗ってきた。だけど、うさぎは何も取って来る事ができなかった。そこでうさぎは今度は必ず取って来るから火を焚いて待っていてくれと言って出かけたけど結局手ぶらで帰ったうさぎを猿と狐は嘘つきとなじった。うさぎは自分には食べ物を取る力はないからどうぞ私を食べてくれと自ら火の中に飛び込んでその身を老人に捧げたんだ。老人は嘆いた、実は老人は帝釈天という神様で三匹の行いを試しただけだったんだ。うさぎを哀れんだ帝釈天は月の中にうさぎを蘇らせて皆の手本にしたっていう逸話があるんだ」
「そのウサギのどこがカラ松なの?」
疑問符を浮かべるおそ松兄さんに皆も賛同して頷く。
「カラ松ってさ兄弟の為に自分を犠牲にすること多いじゃん?寒空の下灯油入れに行くのも殆どカラ松だし僕らが風邪引いたら雪山まで水汲みに行って、僕達兄弟の問題で拉致されたのに僕達に無視された挙句瀕死の状態にされても何も言わない。カラ松ならこの逸話のうさぎみたいになれると思うよ?」
それを聞いておそ松兄さんが笑う。
「じゃぁ、そのうち一松に月じゃなくて星にされるかもな!ぎゃははははははは!」
「それやばいよ!現実になるパターン!」
おそ松兄さんとトド松が瓦をバシバシ叩きながら笑っていた。