第5章 十五夜のうさぎ
トド松side
僕と一松兄さんとで月見団子を作っている。
それをチョロ松兄さんが横で座って眺めていた。
「ねぇ、チョロ松兄さん暇なら変わってよ」
「一松だって暇だろ?」
「でも、俺は何もできない。チョロ松兄さんは少しは料理できるでしょ」
そうやってぶつぶつ文句を言う一松兄さんに僕は言った。
「できないからやるの!」
一松兄さんが振り向く。
「俺、別に料理なんてできなくていいんだけど」
「じゃあ、一松兄さんが働くの?」
「え?」
何の話だという顔をする一松兄さんに僕は作業の手はそのままに続ける。
「一松兄さんはカラ松兄さんと別れるつもりなの!?違うでしょ、ずっと一緒にいるつもりでしょ?だったらゆくゆくは二人暮らしするでしょ?二人で働いて二人で家事を分担するか一人が働いて一人が専業主夫かでしょ。どちらにしても料理はできなくちゃ!」
「そうだね、僕らだってずっとこの家にいるわけにはいかない」
チョロ松兄さんも納得というふうに頷いた。
「たし・・・かに・・・俺働くの無理かも」
「そう思うんだったら尚更、カラ松兄さんが働くしかないんだから一松兄さんは家事をこなせるようにならなくちゃ!」
すると一松兄さんはあんこを混ぜていた手を止め、木べらを見つめる。
「一松兄さん、僕と一緒に料理教室通わない?」
「はっ!?無理無理無理!!」
「無理かどうかは行ってみないと分からないでしょ?おいしい唐揚げ作れるようになったらきっとカラ松兄さん喜ぶよ!」
わなわなとしている一松兄さんの肩をチョロ松兄さんが叩く。
「一松、行ってみるだけ行ってみろよ?トド松も一緒なんだしこんな機会なかなかないよ?」
すると一松兄さんは小さくコクリと頷いて僕とチョロ松兄さんを交互に見遣る。
「他の皆には言わないでよね!」
「「わかった」」
よ~し、僕の手で一松兄さんを立派なお嫁さんにして見せるからね、カラ松兄さん!!