第1章 悪夢
あれは中学生になりたての時の話だ。
六つ子の俺たちはあっという間に学校中の噂になった。
目立ったり人気者だったりすると少なからずどこかで疎まれるものだ。
俺達も例外じゃなかった。
中でも、兄弟の中で唯一人見知りしてクラスになじめていなかった俺は、そういうやつらの格好の餌食になった。
おそ松兄さんやカラ松やチョロ松兄さんほど喧嘩は強くないし十四松やトド松ほど愛嬌もない。
俺が兄弟の中で一番狙いやすかっただろう。
ある日、クラスの奴、五~六人が俺に一緒に遊ばないかと言ってきた。
俺はやっと友達ができて嬉しかった。
放課後は皆で集まり山の中にある使われていない小さな小屋を基地にして遊んだ。
俺達だけの秘密だった。
とても楽しかった。
でもそれは一ヶ月ほどで終わりを迎えた。
ある日、皆と待ち合わせした基地に向かう途中、道の端に段ボールが置かれてあることに気が付いた。
通り過ぎようとしたけど段ボールから妙な音が聞こえるのに気が付いて足を止めた。
中をのぞくと、三匹の子猫が入っていた。
捨て猫だった。
俺はその猫を基地まで連れて行った。
皆は快く猫を基地に住まわせることを許可してくれた。
翌日、猫のエサになりそうなものを持って基地に走った。
俺は、昨日猫に付けてあげた名を、ちょっとはにかみながら呼ぶ。
「シロ、クロ、トラご飯だよ!」
子猫が逃げ出さないように閉めておいた段ボールを開けた。
全身の毛が逆立つような感覚に襲われた。
段ボールの中にはあるはずのないものが入っていた。
段ボールの中には透明のビニール袋。
その中には水が・・・そして黒い子猫が入っていた。
クロだった。
俺は無我夢中でその袋を引き裂いた。
そして人工呼吸をしようとクロの体を抱き上げた。
クロの体はカチカチに硬くなっていた。