第3章 勇気
突然視界がぐらりと揺れた。
思っていた以上に高熱を出していたらしい。
揺れた視界が今度は一気に流れた。
と思ったら俺の体は川の中だった。
必至にもがいたが意識がもうろうとしているのと服を着ていて動きづらいのと流れが速いのとでどんどん水に飲まれていく。
体があちこちの岩にあたり鈍い痛みが走った。
そんな中何とか岩に手をかけることに成功した俺は再び流されそうになりながらもなんとか浅瀬までたどり着いた。
そして力尽きた。
夢の中、皆が俺を呼ぶ声が聞こえてきた。
寒い。
寒いけど・・・暖か、い?
そんなことを考えていたら愛しい人の声が聞こえた。
求めるような声で何か言っている。
俺は全神経を耳に集中させた。
「俺だってお前が好きだよっ、愛してるよカラ松!お願っ、いか・・・ないで!!」
その声で、その言葉で完全に覚醒した。
目の前ではトド松と十四松とチョロ松が泣きながら俺を擦っていた。
暖かかったのはこのためか・・・
そして、俺の頭の上の方からおそ松がひょっこり顔を出して安堵した様なため息をついている・・・ということは?
今俺にしがみついているのは・・・
俺は先ほどまでの夢の事を思い出した。
あれは夢じゃなかった?
俺は直ぐに一松の頭をこのままでいて欲しいと思って捕まえた。
やっとお前の本音を聞き出すことができた。
命がけになってしまったが結果オーライだぜ。
お前を決して離さない。
俺は誓い通り一松の手を放さなかった。
俺は一松と到着した救急車に乗った。
そして、テントではなく病院のベットで一夜を明かした。
朝起きると心配そうな一松の顔が目の前にあった。
「おはよう、一松」
「お、おはよう・・・よかった、目覚めて」
「やっとお前が手に入ったのに目覚めないなんて事あるわけがないだろう?」
一松は昨夜のことを思い出したのか顔を真っ赤にして俺から目をそらした。
”手に入った”という言葉に反論しない事にほっとした。
次の日になったらなかったことにされてしまうんじゃないかと思っていたからだ。
俺はいつの間にか離れていた手をもう一度つなぎたくて一松に手を差し伸べた。
一松はチラリと俺の手と俺の顔を窺ってぷいっとそっぽを向いて俺の手をぎゅっと握ってくれた。