第3章 勇気
一松side
突然の衝撃に気が付くとおそ松兄さんが俺の胸倉を掴んでいた。
おそ松兄さんの後ろでは泣きながら三人がカラ松の体を温めているようだった。
「てめぇ、一松!この状況でよく傍観してられるな?」
傍観決め込んだんじゃない。
体が動かないんだ・・・
その言葉すら出てこない。
「おいっ、一松聞いてんのか?」
俺は完全に放心状態だった。
ただ、一筋涙がこぼれただけ。
と同時にパーーーーンッ!と乾いた音が響いた。
おそ松兄さんに顔を挟むように両頬同時に叩かれていた。
「しっかりしろよっ、一松っ!カラ松にかけた最後の言葉があんなんでいいのか!?このままこいつに会えなくなってもいいのか!?」
頬を挟まれたまま揺さぶられ俺は、はっとする。
「・・・だ・・・嫌だ、カラ松」
俺は駆け出した。
カラ松の傍に。
十四松が場所を譲ってくれる。
俺はカラ松の左隣にしゃがみこむと頬に触れた。
冷たい。
俺が必死で突き放したのに結局逝ってしまうの?
だったら嘘なんてつかなけりゃよかった・・・
カラ松・・・
「カラ松っカラ松カラ松!!嫌いだなんて嘘だよっ、起きてよ!」
俺はこの声が届いてほしいという一心でカラ松の首に腕を回し覆いかぶさった。
カラ松の耳元に顔を寄せ叫んだ。
「俺だってお前が好きだよっ、愛してるよカラ松!お願っ、いか・・・ないで!!」
「カラ松兄さん!!」
驚いた様なトド松の声が響いた。
何事かと頭を上げようとしたら誰かが力なく俺の頭に手を置いた。
俺も驚いて頭を少し上げ、視線を横にやる。
カラ松がにっこりとこっちを見ていた。
「その言葉が聞きたかった・・・もう離さないぞ?」
そしてやっぱり俺は悪態をついた。
「それはこっちの台詞だから」
でも、今度のは素直な俺の気持ちだった。