第3章 勇気
「心配するな、まだ下流の方は探してない。これから探しに行くところだ」
「今度こそ僕も行くよ!」
俺とトド松はカラ松の名前を叫びながら川沿いを歩いた。
五十メートル程下流まで来た時だった。
「お、おそ松・・・兄・・・さん」
トド松が涙目で自分の足元を指さしている。
俺はトド松の懐中電灯で照らされたその場所に目を凝らした。
水の中に半分浸かってはいるがそれはカラ松が持っていた懐中電灯と同じものだった。
「トド松、皆を呼んで来い!」
「う、うんわかった!」
俺は一層大きな声でカラ松を呼んだ。
「カラ松っ!!おいっ、ふざけてんじゃねぇぞ出てこい!兄ちゃん流石に怒っちゃうよ!?」
俺は昼間よりもうんと冷たい川の中に入りじゃぶじゃぶと音を立て歩き回った。
すると、目の前に大きな岩が現れた。
その陰に見覚えのある青。
「カラ松っ!!」
岩の陰に回ると全身びしょ濡れで傷だらけのカラ松が眠るように座っていた。
俺は慌てて岸に上げるためカラ松の背中から脇の下へ腕を通した。
「くっそ、この筋肉馬鹿・・・はぁっ、重いんだよ・・・」
「おそ松兄さん、カラ松がいないって・・・カラ松!!」
そこにトド松とチョロ松と十四松、少し遅れて一松がやってきた。
十四松がカラ松を岸に上げるのを手伝ってくれた。
岸に上げるとチョロ松がカラ松の胸に耳を当てる。
トド松は救急車を呼んでいるようだ。
「兄さん、まずい・・・心臓止まりかけてるかもっ」
「おいっ馬鹿言え!そんなこと・・・」
俺も胸に耳を当てぞっとする。
規則正しいはずのそれは乱れ、明らかに余白があった。
俺は慌ててカラ松の服を脱がし、自分の服を着せたチョロ松と十四松も自分の服を脱ぎ、カラ松に被せ服の上から擦る。
「カラ松っ!しっかr「もうっ!そんなのどうでもいいから早く来てよ!カラ松兄さんが死んじゃう!」
トド松が動転しているようで、電話の向こうから落ち着いてくださいという声が聞こえた。
俺はトド松からスマホを奪い取り状況を説明して指示を煽った。
電話を終え、俺もカラ松の体を温めるのに徹する。
その時、横でただ茫然と見ている一松に気が付いた。
俺はカッとなって一松の胸倉に掴みかかった。