第3章 勇気
「何してんの?」
「夜風にあたろうと思ってな」
ちょっと飲み過ぎてなとカラ松は闇の中に消えて行く。
「おいっカラ松!危ねぇから行先だけ言ってけよ!」
「川辺を歩いて来る」
闇の中から返事が返ってきたのを確認してテントを閉めた。
ありゃりゃ~、思ったよりダメージ受けてる?
トド松も心配そうに俺の顔を覗き込む。
「何?カラ松が心配か?」
トド松はコクリと頷いた。
「さっきも言っただろ?あいつはこんなことくらいじゃへこたれない。明日にはいつも通りイタイ台詞ぺらぺらしゃべってるって。お兄ちゃんが嘘つくと思う?」
「・・・思う」
「ありゃ?」
そんなやり取りをしながら横になった。
しばらくして、遠のき始めたおれの意識をトド松が引き戻す。
「兄さんっ!」
「ん゛~、寝れそうだったのに・・・何?」
「カラ松兄さん遅くない?」
時計を見る。
カラ松が出かけてから三十分程たっていた。
確かに少し遅いような・・・
「ったくしゃーねぇなぁー、ちょっとカラ松連れ戻してくるわ」
「僕も行く!」
「行き違ったら困るからお前はここにいてくれよ」
俺は早く寝たいのもあって足早に川辺に向かった。
ったく、あのくらいでそんなにへこんでらしくねぇな~とか考えながら懐中電灯を川辺沿いに照らす。
カラ松も懐中電灯を持っていたのだがそれらしい明かりは見当たらない。
胸騒ぎを覚えて声を上げた。
「カラ松!どこだ?カラ松ーーー!」
川の音と俺の声のこだまだけが響き渡る。
俺は川沿いに走り出した。
釣りをした上流の方まで行っているのかもしれない。
俺は上流に向かって走り出した。
移動中、そんなことはないと言い聞かせながら川の中を照らしつつ走った。
石がゴロゴロしていて足を取られても構わず走った。
だけどカラ松の姿はない。
名前を呼んでも返事はない。
釣りをした所に辿り着いた。
これ以上先は足場がかなり悪いからこれより先に行ってるとは考えづらかった。
俺はまた全速で下流の方に走った。
息を切らしながら何度も名前を呼ぶ。
「おそ松兄さんっ!」
声がした方を懐中電灯で照らす。
そこにいたのはカラ松・・・
ではなくトド松だった。
「もしかしてカラ松兄さんいないの?」
「はぁっはぁっ・・・」
俺は頷くことしかできなかった。
トド松の顔が一気に青ざめた。