第20章 6人旅(旅行編)
十四松side
トド松が旅行のパンフレッドを持って帰って来た日の事だった。
僕は格安旅行のページをめくっていて見覚えのあるものを見つけた。
それが今回僕達が泊まることになった旅館・・・と言うか、正確には見覚えのあったのは旅館と一緒に写っていたこの松の木だ。
この前夢で逢った、僕達の前世の前世・・・
妖怪の僕達がそこにいる事を僕は覚えていた。
だから、トド松を説得してこの旅館に泊まるプランを選んだ。
そして、この旅館に着いたらすぐにろくろ首の僕が僕の中に入ってきて押し入れの事を教えてくれた。
そして今に至るんだ。
一応、僕も皆の真似をして松の木に触れてみる。
僕は妖怪の頃、初めて一松兄さんに出会った日の事を思い出した。
おそ松兄さんとカラ松兄さんはお酒を酌み交わす仲だった。
その度、僕はおそ松兄さんが連れていたチョロ松兄さんと遊んでいた。
ある日、カラ松兄さんがトド松を連れて帰って来た。
トド松をおそ松兄さんとチョロ松兄さんにも紹介しようってことになっておそ松兄さんの所に行ったら、一松兄さんがいたんだ。
それがカラ松兄さんと一松兄さんの出会い・・・
僕はこの時、カラ松兄さんと一松兄さんが両思いになると想定済みだった。
そして、今度こそこの二人の恋を叶えてあげたいと思っていた。
カラ松兄さんは一松兄さんに一目惚れだった。
それから毎日、カラ松兄さんはおそ松兄さんに・・・と言うより、一松兄さんに会いに行くようになった。
僕とトド松とチョロ松兄さんと一松兄さんで毎日遊んだ。
僕達が危ない目に合うと、カラ松兄さんは風のごとく現れて助けてくれた。
格好いいカラ松さんに一松兄さんもいつのまにか頬を染めるようになっていた。
僕は見守っておくつもりだったけど、待ちきれなくなって、ある朝カラ松兄さんに「男なら当たって砕けろでっせ!」と言った。
カラ松兄さんは気づいていたのかと、驚いて少し顔を赤くして「よし、おそ松・・・いや、一松に会いに行こう!」そう言って出かけた。
カラ松兄さんはまずはおそ松に話があるからと、僕達に席を外すよう言った。
そして悲劇は起きた。
もう、カラ松兄さんの声は一松兄さんには届かない。
一松兄さんも謝罪の言葉しか口にしなくなってしまった。
やっと
やっと、二人を救ってあげられる・・・