第20章 6人旅(旅行編)
「なるほどね、それなら押入れの墨を消せば良いってこと?」
それを聞いてトド松が押入れの前に立ちはだかった。
「冗談じゃないよ!幽霊が出てきちゃうでしょ!」
瞳をウルウルとさせて怯えるトド松の手を十四松が握った。
「大丈夫だよ、トッティー!妖怪のカラ松兄さんが助けてくれるよ!」
その言葉に勇気付けられてニコリと頷くトド松に悪いなと思いながらも俺は口を開いた。
「そうもいかないんだ。押入れの封印のせいでカラ松さんの封印の風化が止まってる。だから押入れの封印が解けても、カラ松さんの封印が解けるまで数十年はかかるんだ。以前のカラ松さんなら弱まった封印を破れたかもしれない。だけど、今は魂の一部が残っているだけ。生まれ変わりのカラ松を取り込んだけど俺たちに妖怪の力は無いし結界を破るのは難しいと思う。」
トド松は「そんなぁ〜」とその場にへたり込んでしまった。
沈黙が流れる。
無理もない。
だって、という事は…
カラ松は数十年間、カラ松さんの魂とともに封印され続けるということになるから。
どうすることもできない事実を目の当たりにし、俺も呆然としていた。
カラ松に二度と会えない?
そう思った瞬間、沢山のカラ松との思い出が蘇る。
一つ、二つ…
思い出す度に瞳から雫が溢れてそれはみるみる数を増した。
拭うことも忘れて思い出の中のカラ松とカラ松さんに会いたくて、抱きしめたくて、抱きしめられたくて、声が聞きたくて…
「うっ、うぅ」と声が詰まる。
その僕の声に重なるトド松の声。
見るとトド松も俺の同じように泣いていて、その横で膝の上で強く拳を握って震えているチョロ松兄さんがいた。
おそ松兄さんはこんな状況でも冷静な感じだ。
でも、腹立たしく感じはしない。
おそ松兄さんもまた、同じように心配している。
腕を組んでどうしたものかと考え込んでいるようだ。
トド松の左側では十四松が口元に袖に隠れた手を当てておそ松兄さんと同じように考え込んでいるようだった。