第20章 6人旅(旅行編)
「やっぱりおかしいよ」
「え?」
「だって、この旅館確かに古いけど築数十年だろ?そんな建物の押入れの中に封印されてるなんておかしくない?それに、お札は十四松が剥いだし、あのお札で封印されてるのは幽霊なんだよな?」
まあ、幽霊と妖怪の違いなんてわからないけどとチョロ松兄さん。
でも、その経緯(いきさつ)は俺の記憶にしっかりと刻まれていた。
「それは僕が説明する」
「一松兄さんが?」
首をかしげるトド松。
その表情はとても不安気だ。
無理もない、相棒が忽然と姿を消したんだから。
僕だって十四松がそうなったら居ても立っても居られないと思う。
トド松の横に座っていた十四松も察したようで、トド松の頭を撫でてニッコリと微笑んだ。
「チョロ松兄さんの言う通りカラ松さんが封印されたのはこの建物の辺りであってこの押入れじゃない。月日が経って封印は風化して、もう少しで封印が解けるって時に、カラ松さんの力と僕の力を欲して雑魚が集まってきたんだ。それが封印されたのがこの押入れみたい」
「みたいって、お前」
そういって笑うおそ松兄さん。
「仕方ないでしょ、僕の記憶じゃないんだから…自分の記憶と同じように頭の中にあるけどまだ慣れない、し」
僕は立ち上がって冷蔵庫を開け、ペットボトルのお茶を開けた。
ぐびーっと飲んでいると横から手が伸びてくる。
それを繰り返してカラ松を除く兄弟全員がお茶を回し飲んだ。
緊張から皆喉が乾いていたらしい。
最後にチョロ松兄さんがのみ終えたのを合図におそ松兄さんがバシッとテーブルを叩いた。
「よーし、カラ松を早く助け出そうぜ!早く寝ないと明日遊べねぇしさ!」
鼻の下を人差し指で擦ってにかっと笑うおそ松兄さんをみて、兄弟たちの顔が晴れる。
「そだね、でもどうしたらいいの?」
と、トド松に尋ねられたチョロ松兄さんと目が合う。
「一松、この事はお前が一番わかると思うんだけど、正解じゃなくてもいいよ、何か思いつく手はないの?」
「その前にさっきの話の続きを話すよ。押入れの封印は完全に解けてないんだ。押入れの中を見て。お札の下に墨で何か書いてあるでしょ?これがあるからまだ幽霊は出てこれないでいる。そして、これのせいでカラ松さんの封印が風化せずに未だに効力を保ってるんだ」