第20章 6人旅(旅行編)
一松side
酒の力を借りて皆が寝静まった後、少し遅れて睡魔に襲われふわふわし始めた俺は押入れから聞こえる奇妙な音で飛び起きた。
幽霊とかそんなのはあるとかいないとかよくわからないしどうでもいいと思っている。
だけど、さすがにあんなものを見た後でガリガリガリと押入れの中から聞こえると流石に怖かった。
カラ松を起こそうとカラ松の肩に手をかけたけど、ビビリなこいつを起こしたところで何の役にも立たないと思い、起こすのをやめた。
ホラー映画とかでよく、二階から物音がして見に行くとか、人がいる気配を感じて扉を開けるなんてシーンがあるけど、何で死ぬほどビビってるくせに見に行こうとするんだよって思ってた。
でもいざ、自分がその状況に置かれると何が起きてるのかわからないことが怖くて、気がつけば俺は押入れの扉に手をかけていた。
勢いよく開けて、勢いに任せて押入れの中に頭を突っ込んだ。
その瞬間に僕は自分が妖怪の子供で、他の兄弟そっくりの妖怪達とのことを見た。
否、見たというより思い出したといった方が正しい気がした。
はっと我に帰った時、後ろで何かが青白く光っているのに気がついて押入れから這い出たら、カラ松の体が宙に浮いていて、胸を押さえて苦しそうにもがいていた。
カラ松の胸元には見覚えのあるお札が黄色い光を放っていて、そのお札が烏天狗のカラ松さんを封印したものだとすぐにわかった。
そしたらきゅーっと胸が苦しくなって、勝手に涙と感情が溢れてきた。
助けなきゃって思って手を伸ばしたけどカラ松の姿はパッと消えてしまった。
そこからは記憶が曖昧だけど、カラ松を助けようとお札を剥ごうとしていてチョロ松兄さん達に見つけられたんだと思う。
俺はこれまでの経緯を、チョロ松兄さんは俺を見つけるに至った経緯とその状況を互いに説明しあった。
すると、チョロ松兄さんは顎に手を当て「うーん」と唸った。
「どしたの、チョロ松?」
おそ松兄さんがチョロ松兄さんの顔を覗き込む。
「うん、妖怪カラ松が封印されたのはいつの時代の話なの?」
「人間は時代劇のような格好をしていたから幕末とかよりずっと昔だと思う」
僕の回答に何かを確信したようにチョロ松兄さんは大きく頷いた。
そして口を開く。