第20章 6人旅(旅行編)
さっき、意識朦朧の中呼んでいたカラ松さんというのはやはり、一松がカラ松を読んだのではなく、猫又の一松が烏天狗のカラ松をよんだということだろう。
にわかには信じ難いけど、こんな時に冗談なんか言えるはずもない。
皆も相変わらず、一松の話に耳を傾けていた。
「人里で運悪く、陰陽師に見つかって、新しい術の試しに僕は封印されそうになった。そこにカラ松さんが現れた。カラ松さんは僕を庇うのが精一杯で…僕の代わりに封印された。おそ松さんが封印を解こうとしたけど無理で…時代の流れで居場所を失った妖怪達はどこかへ行ってしまって、この地に残ったのは封印されたカラ松さんと僕だけになった。僕はカラ松さんの封印を解くことができないまま最後を迎えたんだ。だけどその時魂の一部をここに置いて来た。カラ松さんも僕を1人にさせまいと同じ様に魂の一部をここに残したんだ。よくわからないけど僕達はお互いの魂に吸い寄せられたみたい。」
すると、おそ松兄さんが首をぽりぽりと掻きながら立ち上がって、押入れの反対側の扉を開ける。
そして封印のお札のところを覗き込んだ。
「じゃあ、カラ松はここに封印されてるってことでいいんだよな?」
「し、信じてくれるの?」
はぁ?と声をあげたおそ松兄さんの代わりに僕が一松の髪をくしゃりと撫でた。
「信じないわけないだろ?」
一松は唇を震わせて言う。
「よ、よくわかんないけど…出してあげたいんだ!おそま、兄さん、チョロ松兄さ、じゅぅじ松、トド松っ助けて!お願い」
一松の言葉なのか、猫又の一松の言葉なのかわからないけど、僕達を頼る言葉をこいつの口から聞けることを驚くと同時にとても嬉しく感じた。
それは他の3人も同じようだった。
「お兄ちゃんに任せとけって!」
「困った時はお互い様だろ?」
「あたりまえでんがなぁー!」
「借りは恋話で返してよね?」
一松はありがとうと言葉にはしなかったものの頷くように下を向いて、宛がった腕を涙に濡らした。