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【おそ松さん】色松恋物語(BL長編)

第20章 6人旅(旅行編)


「押すなよ!?」

「大丈夫だって、チョロ松ぅ〜、いざとなったらお兄ちゃんが守ってあげるから!」
「だったらお前が行けばいいだろ⁉︎」

あれから五分、僕たちは未だガリガリと鳴り続ける押入れの前で扉に手をかけることすらできずにいた。


僕の後ろに隠れた兄弟3人にグイグイと押入れに向かって押される。

「ぜっ、絶対押すなよ!押したらケツ毛燃やしてやるからな!」
そう言い放って意を決して押入れの襖に手を掛けた。
最後にもう一度、「押すなよ」と叫び、その勢いに任せて襖を開けた。
と、同時に僕の体は押入れへと投げ出され、一瞬遅れておそ松兄さんの叫び声が聞こえて僕の背中にズシリとのしかかった。
おそ松兄さんに悪態をついてやろうと振り返る途中、視界に入ったものを見て唖然とした。

「「いち…まつ?」」
おそ松兄さんの声が合わさって、おそ松兄さんを見やった。

「え!?一松兄さん?」
「うげっ!」
「ふがっ!」
ドシ!ドシッ!と弟二人の重みが加わって、空っぽになった押入れの板張りに僕の体がメリ込む。


ぎゃーぎゃーと騒ぐ僕達の横で、一松は相変わらず押入れの壁を掻き毟る。
それを見て背筋が凍る思いがした。
他の兄弟も同じ様で、皆黙り込んだ。
沈黙の後、鼻をすする音がしたかと思うと、一番上に折り重なっていたトド松が押入れの奥に飛び出して、一松の背中にしがみつく。


「一松兄さんやめてよ!なんの冗談⁉︎闇松にしてもこれはやばいよ!」

しかし、一松は見向きもせず壁を掻き毟る。

「十四松、一松を引きずり出すぞ!」
「あいあいさー!」

ようやく僕の上から退けたおそ松兄さんと十四松も押入れの奥に向かい、一松を羽交い締めにして引きずる。

「やめて!離して!」

暴れる一松を泣きじゃくりながら見つめているトド松の手を取った僕も押入れから出る。

明るい所に出て初めて気付いた。


「こいつ、一松なの?」

おそ松兄さんの言葉と同じ疑問を僕も持った。
顔は一松だ。
猫耳も尻尾もよく生やしている。
だけどいつも見る尻尾とは違って、先が二股だった。
それだけじゃない。
この部屋に置かれていた浴衣は2種類。
おそ松兄さんとカラ松と十四松は紺一色の浴衣で、一松は僕とトド松と同じ白に紺の縦じまの浴衣だったはずだ。
今、目の前にいる一松は薄紫色の着物を着ていた。


そして、どう見ても子供だった。
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