第20章 6人旅(旅行編)
温泉を満喫した後は、夕飯までの時間を部屋で過ごすことにした。
おそ松兄さんはまたお酒を飲んでいる。
一松は出窓に腰掛けて外を眺めている。
カラ松は一松の足元に座って、脚をマッサージしてスパダリっぷりを発揮していて、その向かいでミシミシとスマホを握りしめたトド松が同一人物とは思えない顔をしている。
僕は、子供のように部屋の中のあちこちを開けて探検?して回る十四松を見ていた。
「十四松、何してるの?」
声をかけると、戸棚から顔を出した十四松は笑顔全開で無邪気に探し物と答えて、戸棚の横にある押入れを開ける。
「探し物って?」
特に目当てもないだろうけど、暇を持て余していた僕は無意味な質問を投げかけた。
すると、少しの間を開けて押入れの中から一際大きな声が響く。
「あっ!あったぁーー!」
全員の視線が押入れに集中する。
押入れから浴衣をひどく乱して姿を現した十四松は「見て!」と紙切れを掲げて見せた。
僕とトド松とカラ松の悲鳴が響き渡る。
無理もない。
十四松の手に握られていたのは古びたお札だった。
沈黙が流れて、その沈黙を低い声が破る。
「ねぇ、お札って剥いぢゃっていいの?やばいんじゃないの?」
その声と同時にトド松の意識が飛んだ。
「おい、一松っ!」
「え、何⁉︎僕、普通に喋っただけだけど?」
普通に喋ったとか言ってる時点で狙ってるだろ!
というのは置いておいて、一松の言う通りまずいのは間違いない。
「ど、どうすんだよこれ…」
流石の僕も声が震えた。
声の震えに気づいたのか、おそ松兄さんが吹き出す。
「チョロ松ぅ〜、大袈裟にビビりすぎだってぇ〜」
僕はおそ松兄さんから酒の入ったグラスを奪い取ると胸ぐらを掴んで、十四松の目の前まで引きずった。
「ってーなぁ!何すんだよチョロま…ぎやぁぁぁあ!」
おそ松兄さんは一気に後ずさりカラ松を盾にするようにカラ松の背に隠れてひょっこりと顔を出す。
「そ、そそそ、それ!血じゃん!血じゃん!」
そう、そのお札には引っかいたような血の跡がいくつもついていた。
まるで、このお札をはがそうとしたかのように。