第20章 6人旅(旅行編)
肩を揺すられて、いつの間にか寝ていたことに気づく。
「ん〜?」
ゆっくりと瞼を開けると、目の前にはどこにでも有りそうな駅のホームの景色があった。
「大丈夫ですか?終点ですよ?」
女性の声に驚いて振り向くと、若い女性がキャリーバッグを片手に僕の肩を揺すっていた。
どうやら気を利かせて起こしてくれたようだ。
僕は礼を言って、とりあえず横で寝ているおそ松兄さんの肩を揺すって起こした。
おそ松兄さんは「ぅん〜〜」と不機嫌に唸って僕の手を払いのけると再び眠りについてしまう。
仕方がないので次は目の前の席で眠っている下の2人を譲り起こした。
「十四松っ、トド松!着いたよ!」
するとトド松は目をこすりごそごそと荷物をまとめ始める。
小さくため息をついて、通路を挟んで向かいの席にいるカラ松の肩を叩いた。
「カラ松!起きて!」
カラ松は「あぁ?」と薄眼を開けた。
寝起きのカラ松の機嫌の悪そうな雰囲気はいつものことだけど、思わず怯む。
再び眠りにつくカラ松を唖然と見つめていて、ふと我に返った。
何で僕がビビったり怒られたりされなきゃいけないんだ!
僕は改めてカラ松の肩を叩くと、不機嫌に目を開けたカラ松に「一松はカラ松に担がれるのがご希望なんだってさ!だから一松と一松の荷物と自分の荷物、待ってよね」
一松と聞くとキラリと目の色を変えて飛び起きる。
そして真っ先に準備を済ますと「先に行くぞ?」とさっきまでの顔は嘘のようにキリリとしていた。
「カラ松、行く前におそ松兄さん起こしてよ、さっきから起こしても起こしても起きないんだよ。ったく、この酔っ払い」
「そうなのか、しょうがない兄貴だ」
そう言うカラ松に心の中でお前もだよと突っ込んだ。
「おい、おそ松っ、着いたぞ!起きろ!」
カラ松も僕と同じように手を払いのけられる。
すると、一松のことでキリッとしていただけだった表情が崩れを見せる。
と同時にカラ松の拳がおそ松兄さんの脳天を撃つ。
涙目で飛び起きたおそ松兄さんは、酔いが覚めたと不機嫌に僕から荷物を奪い取って「待てコラ、カラ松っ!」と足早に出て行くカラ松の後を追って行った。
その後を僕と、トド松、トド松に手を引かれた十四松がそれぞれ荷物を持って続いた。