第20章 6人旅(旅行編)
2月13日
チョロ松side
「もぉー、兄さん達っ!急がないと遅れちゃうよ!」
そう言いながら新品の服でキメ込んだトド松は大きな荷物を手に三和土(たたき)で、これまた新品の靴に足を入れている。
準備を済ませた僕も荷物を手にトド松に続く。
「トド松〜、そんなでっかい荷物で本当に大丈夫〜?」
その声に振り向こうとした瞬間、がっしりと肩を組まれて、目の前に期限の良さそうなおそ松兄さんの顔が現れた。
おそ松兄さんは「持てなくなったらカラ松兄さんに頼むからいいもーん」と言うトド松にけらけらと笑った後、僕に振り向いて白い歯をニンマリと笑って見せた。
「チョロ松〜、お前は旅行だって言うのにそんなダッサイ格好でいいの〜?」
「うるさいなぁー!別にいいでしょ!」
おそ松兄さんを払いのけ、靴を履く。
続いてカラ松と一松、十四松も階段を降りてきて、気づけば玄関は大きな荷物もあって、ぎゅうぎゅうだ。
「よーし、みんな準備はいいか?」
「オーケーだぜ、ブラザー!」
「完璧だよ」
「…うん」
「準備万端ーーー!出発進行ーーーう!」
「もちろん!」
「んじゃ、行くぞーーー!」
「おーーー!」
子供のようにはしゃいで、僕たちは声を揃えて出発した。
電車で2時間、本当にちょっとした旅だけど、僕達にとってはなかなか無い貴重な経験だ。
二泊三日と言う短い時間だけど、内心僕もとてもワクワクしている。
皆の嬉々とした顔を見ていると、ワクワクも2倍にも3倍にも感じられた。
電車に揺られている時間は直ぐに退屈になって、トド松が持ってきていたトランプで時間を潰した。
それにも飽きてきた頃、おそ松兄さんは電車に揺られながら飲むビールは最高だと真っ赤な顔で上機嫌。
スヤスヤと眠り始めた一松を幸せそうに見つめているカラ松。
十四松は車窓を覗き込んで絶え間無く首を左右に振っていた、そのせいか気分の悪くなった十四松の背を「しょうがないなぁー」とさすって面倒を見るトド松。
僕は何度も見たはずの旅行のパンフレットをペラペラと眺めていた。