第1章 悪夢
「っち松!・・・おい!しっかりしろ!!」
遠くの方でクソ松の声がする。
ぼーっとする意識が誰かに肩を揺さぶられ現実に引き戻される。
俺は、いつの間にかあのまま寝てしまったらしかった。
「一松!一松、大丈夫か!!?」
「耳元でわーわー騒がないでよ。鼓膜破る気?声でかすぎるんだけど」
俺はいつものように悪態をついた。
なのにこいつは・・・カラ松は心底安心したような顔をしている。
・・・それが余計に俺をいらだたせた。
「起きたら居ないから皆心配して探したんだぞ?何でこんなところに寝てるんだ、風邪ひいたらどうする?」
「別にいいでしょ、クソ松には関係ない」
そう言って俺はカラ松の手を払いのけると立ち上がった。
その時俺の肩から何かが落ちた。
足元を見ると、タオルケットが落ちていた。
そういえば外の明るさからして一、二時間は寝ていただろうか。
なのに朝の冷気で冷えているはずの体は少し暖かいくらいある。
どうやら、俺が起きるまでの間カラ松がタオルケットで温めてくれたらしい。
だけど、俺は礼を言うこともなくその場を去った。
居間に行くと他の兄弟に遅いよーと言われながら自分の定位置に座る。
「一松、カラ松おいてきちゃったの~?かっわいそ~」
おそ松兄さんが肘でつついて来る。
俺は短くうんとだけ返した。
しばらくしてカラ松が下りてきて、チョロ松兄さんの号令でや朝食が始まった。
だけど、今朝の夢の所為か食べる気になれなかった俺は早々に箸をおいた。
「十四松、俺の分も食べてよ」
「いいんっすか!?」
十四松がにぱっと笑って俺の皿に手を伸ばしたけど、それをチョロ松兄さんが止める。
「一松、ほとんど食べてないじゃない?どこか悪いの?」
「いや、別に。ただ、今朝は目覚めが悪かったから食欲わかないだけ」
俺はそう言って本当は関係ないけどカラ松をにらみつける。
一瞬カラ松と目が合ったが、カラ松は何も言ってはこなかった。
チョロ松兄さんはお昼はしっかり食べなよと言って俺の皿を十四松に回してくれた。
俺は二階に上がると着替えを済ませ、猫のエサを持ち路地裏へ向かった。