第18章 二人きりのクリスマス(クリスマス)
風呂から上がると、まだ髪から水を滴らせたままカラ松はベットルームへと向かった。
何かを注文しているのかぼそぼそと何か言っているのが聞こえる。
俺が、しっかりと髪を乾かして、ベットルームに向かうと丁度呼び鈴が鳴ってカラ松が届いたものを取りに向かう。
戻って来たカラ松の手にはウェルカムドリンクのコーラとアイスコーヒーが握られていた。
「こういう時だ、乾杯ぐらいしないか?」
「何回目だよ」
二人で少し笑いあった。
「ま、いいんじゃない?しよ?」
カコンっ!
部屋に響いたのはプラスチックの音で、どちらからともなく再び笑いが起きる。
ひとしきり笑ってコーラをぐっと飲んだ所で再び呼び鈴が鳴る。
俺は他にも何か頼んでいたのかとカラ松を見やる。
カラ松が立ち上がらないので、扉から近いのは俺だしと思って俺は腰を上げた。
扉を開けて出入り口に向かう。
よくよく考えたら注文した物を取りに来るのは初めての事だった。
どこにあるのだろうかときょろきょろと見まわしていると、入って来た時にはなかったものがふと目に入った。
小さな紫色の箱に青いリボンが掛けられてある。
そのリボンの下に挟まってあるカードには見慣れた力強い文字で俺の名が書かれてあった。
震える手でカードを開くと、今まで何度も聞いた言葉が書かれていた。
俺は箱とカードを手に部屋に戻る。
すると、テーブルの上には先ほどまでは無かった掌に乗りそうなホールケーキがあった。
「何なの?何なのマジで・・・ほんと・・・」
俺の瞳からは勝手に涙が溢れていた。
驚いた顔をしたカラ松はぴゅーんと音がしそうな速度で俺に駆け寄ってくる。
「い、一松っ?何故泣くんだ!?」
俺は困った様な焦った様な何とも言えない顔をしているカラ松の頬を抓った。
「そんな顔しないでよ・・・ちゃんと嬉しいから」
そう言ってカラ松の胸に顔を埋める。
カラ松はふっと笑うと、俺の肩を支えてソファーに戻る。
暫くプレゼントを見つめていると、今日何度目になるかわからないクリスマスの決まり文句をカラ松が囁く。
俺は小さくうなずいてカラ松を見やった。
「開けていい?」
「もちろん!」
少し緊張しながらリボンを解いて、丁寧に包装紙を剥していく。
視線が痛くて、再びカラ松を見やると、俺以上に緊張した間抜けな顔をしていて思わず吹いた。