第18章 二人きりのクリスマス(クリスマス)
二人掛けのソファーに腰を下ろすと、目の前のテーブルにカラ松がカバンを置く。
そしてカラ松も俺の隣へと腰を下ろして、背もたれに乗せた腕を俺の肩に回して引き寄せた。
カラ松の方へ振り向くとそっと唇を押し当てられる。
苦しくなったところでカラ松を押し返して、テーブルの上のカバンに目を向けた。
「お前がカバン持ち歩くとか珍しいね」
兄弟でカバンを持ち歩くなんて、トド松かチョロ松兄さんしかしない。
こんな日にこんなもの持ち歩いているんだから入っているモノなんて想像がつく。
俺が感づいている事もカラ松自身気づいてるだろうと思うと気恥ずかしくて、早く終わらせようと自分からカバンの中身を打ち明けるよう仕向けた。
カラ松は少し腰を浮かすとカバンに手を伸ばし、俺との間にカバンを置くとがばっとカバンの口を開けて気取った顔をする。
カバンから顔をのぞかせたのは、俺も見覚えのあるものだった。
「これで温めて欲しいのだろう?」
う~ん?と片目を瞑り大きめのひざ掛けをふわりと広げる。
その瞬間に見えるカバンの中は空っぽだった。
期待してしまっていただけに少なからず残念に思っている自分に現金だなと呟いた。
「ん?何か言ったか?」そう言ってカラ松がひざ掛けをふわっと舞わせた。
俺はそれを交わすように立ち上がって風呂場に向かう。
「早く風呂入りたい」
「まったくせっかちな子猫ちゃんだ~」
そう言って顔を赤らめるカラ松にスリッパを投げつけてやった。
浴槽をさっと流し、バブルバスの入浴剤の袋をピッと開ける。
入浴剤を浴槽の底に出しながら以前、泡ぶろに入った時の事を思い出した。
ふと、無駄に大きな鏡を見やるとふやけた自分の顔にイラっとして頬を抓る。
そして、風呂の湯を出すと、以前同様もくもくと泡が立ち始め、良い香りが漂った。
バラの香りの様だ。
カラ松が好きそうな匂いだと、鼻をクンクン鳴らしているとふわっと自分の汗が香る。
あぁ、早く風呂入りたい・・・
早くカラ松の腕の中に行きたい・・・
俺は、風呂が溜まるのも待たず、カラ松を呼ぶこともなく服を脱ぎ棄て、邪魔な匂いを洗い流すことにした。