第18章 二人きりのクリスマス(クリスマス)
離れていく唇にハッとして周りを確認したけど、皆ツリーに釘付けだったり、同じくキスしあってたりで俺達を気にする奴なんていなかった。
俺の心配を察したのかクスリと笑うカラ松。
「あれ?おそ松兄さんとチョロ松兄さんは?」
俺は照れ隠しでふと思った質問を食い気味にする。
「あ、ああ・・・って、ん?十四松とトド松もいないじゃないか?」
その質問に俺はここに来るまでの出来事を説明した。
するとカラ松は少し考えるようにして俺の手を取る。
「一松、ホテルに行こう」
「はぁ!?」
俺は呆れてカラ松の手を払いのける。
「どんだけ盛ってんだよ!おそ松兄さん達が俺達の事心配して探し回ったらどうすんの!」
するとカラ松は何がおかしいのかくすくすと笑う。
俺はムッとしてカラ松を見やった。
「一松、そんな怖い顔をしないでくれ。俺だって考えなしにそんなことを言っているんじゃない、多分ブラザー達はここに来ない」
俺はどういうことかとカラ松を見やった。
「実は、俺もまったく同じような状況でここに一人で来ることになったんだ」
カラ松曰く、おそ松兄さんが可愛い女の子を見つけたとか言って走り出したのをチョロ松兄さんが追いかけて行ったらしい。
「よくよく考えたらその時、ツリーに向かう様には言われたんだが先に言っててくれとか待っててくれとかそう言う事は言われなかった」
「お、俺も・・・かも」
「それに、俺達は時間通りにここに向かったんだ。なのにこの時間になってもおそ松もチョロ松も現れない・・・」
俺はもう一度ツリー周辺を見渡す。
セレモニーも終わり、人はまばらになっている。
だけど兄弟の姿はどこにも見当たらない。
「いないね・・・」
「いや」
否定の言葉に少し残念に思ったのもつかの間・・・
カラ松の指さす先にはこちらに背を向け、家の方に向かう見慣れた四人の姿があった。
「一松、四人のサンタからの贈り物だ・・・貰っておこう」
そう言って差し伸べられた手を俺は指先だけ握って答えた。
それでもにこりと微笑んでカラ松は歩き出す。
あぁ、朝帰りの恋人同士がどこに行っていたかなんて、答えは一つだ。
前にもこんなことあったよなと溜息を吐いた。
だけど緩む頬をマフラーで隠して、俺達は兄弟が向かうのとは逆方向へと向かう。