第18章 二人きりのクリスマス(クリスマス)
一松side
スタヴァーを後にした俺達は巨大ツリーを目指して走っていた。
「はっ、はっ」
「大丈夫、一松兄さん?」
「ちょ、もうよくない?歩いて行こ、よ・・・はぁはぁ」
巨大ツリーまであと500メートル。
店内の時計を当てにしていた俺達は店を出る時になってやっとその時計が10分遅れている事に気が付いたのだ。
既に集合時間を十分過ぎている。
だったら歩いて向かって15分遅れで到着した所で大差ない。
「それもそうだね」と順に足を止めるトド松と十四松。
その時だった。
道路の向い側で人々の歓喜の声が聞こえて来た。
人混みをかき分けて目を凝らすと、そこには赤と白の衣装をまとって作り物の髭で顔を覆った人物がいた。
彼の手には大きな白い袋。
「サンタだ!!!」
「ちょっ、十四松っ!」
伸ばした手は空を切り、十四松は道路へと飛び出し行ってしまった。
「も~、十四松兄さんってば・・・一松兄さん」
「ん?」
呼ばれてトド松に目を向けると、トド松は片足を車道に出している。
「え、何?追いかけんの?」
既に散々走って足はズンと重い。
俺はサンタを追いかけて小さくなっていく十四松を見て眉を寄せた。
「一松兄さんはもう走れないでしょ?ツリーに向かって!」
そう言うとトド松は左右を確認し、道路が空くと同時に駆け出して行った。
俺は走らなくてよくなった事にほっと胸を撫で下ろして再びツリーを目指す。
周りを歩く恋人達も皆、巨大ツリーを目指している様だ。
それを少し羨ましく思いながら一組のカップルの後ろを歩いていると彼氏の方が腕時計を見て「あと3分しかない、急ごう!」と言って足を速めた。
良く気にして見てみると、皆時間をしきりに確認している。
何があるのだろうと周りの会話に耳を傾けると、どうやら0時丁度に巨大ツリーで何かあるらしい。
周りの流れに押されて俺の足も自然と早まる。
そして巨大ツリーにたどり着くと、ツリーの半径50メートルほどをグルっと簡易的な柵が囲っていて近づけなくなっていた。
何だろうかときょろきょろしているとカウントダウンが始まる。
「10!9!8!7!6!」
その時だった。
目の前の人混みをかき分けて伸びてきた手が俺の腕を掴み引っ張り込まれ、突然の事に踏ん張りがきかず、俺の体は一気にツリーを囲む柵まで投げ出された。