第18章 二人きりのクリスマス(クリスマス)
カラ松side
あっと言う間に人混みの中に消えていく一松。
一松の手を掴むために上げた手をおそ松が握ってくすくすと笑う。
「あ~ら、可哀そうなカラちゅん。お兄ちゃんがお手々握ってあげるよ~ん」
俺は素直にその手を取って立ち上がると、コートに袖を通しなおした。
「まぁ、三十分後には合流できるでしょ?それよりさ、あそこ行ってみない?」
そう言ってチョロ松が指さす先には立食タイプの居酒屋があった。
三十分過ごすにはちょうどいいという事で俺達三人はその店に入ることにする。
メニューを見ずに「とりあえず生中~」と店員に声を掛けるおそ松。
俺とチョロ松は一つのメニュー表を二人で覗き込んで、チョロ松は青りんごサワー、俺は「生中をもう一つ」と店員に告げた。
続けて数本の串と、おそ松は焼きそばを頼んでいた。
「く~~~~~~!!」
ジョッキをガタンとテーブルに置き、口の上にひげを作るおそ松。
「今日初めて飲んだ酒みたいな飲みっぷりだな、おそ松」
俺は少しあきれて串をほおばる。
「やっぱ、外で飲むのは一味違くない?」
そう言うおそ松の視線が俺の足元に映る。
「ねぇ、カラ松」
「何だ?」
「ずっと気になってたんだけどぉ~、そのかばん何入ってんの?」
おそ松の指さす先には俺の持ってきたカバン。
チョロ松も気になっていたのか俺のカバンを覗き込んでいた。
「一松に貰ったクリスマスプレゼントだ」
「一松が!?」
「ああ、メッセージカード付きだったんだ!」
俺はクリスマスプレゼントの内容を二人に自慢した。
カバンから出して広げて見せたひざ掛け。
「似合わねぇ~」と腹を抱えてヒーヒー言っているおそ松。
だが、そんなことは気にならない。
俺は、このひざ掛けで今頃温めてあげているはずだった一松の事を思っていた。
ブラザー達と過ごすこの時間は楽しかったが、あっと言う間だと思っていた三十分が長く感じた。