第18章 二人きりのクリスマス(クリスマス)
鮮やかなLEDが景色の一面を覆う。
その景色に魅せられていつのまにか謎の鬼ごっこは終わり、「わぁ~~~」と言う声だけで五分くらい歩き回っていた。
その時、ぶわっとひと際冷たい風が吹いて、かいていた嫌な汗を一気に冷やす。
俺は体温を奪われまいとぎゅっと身を縮めた。
その時、ふわっと暖かいものが俺を包んで、驚いて振り向くと、クソ腹立つ顔がそこにはあって、思わず拳をメリ込ませた。
俺は自分の肩にかかったネイビーのコートを顔を押さえて蹲るカラ松の肩に返した。
「お前が風邪ひくでしょ?」
その言葉に嬉しそうに顔を上げるカラ松にケッと舌打ちをして顔を背けた。
多分、今、俺の頬は赤くなってるだろうから・・・
この後二人の時間が待っているというのに鼻水なんか流されたらたまらない。
なんてことは口には出せないけど立ち上がろうとするカラ松に手を差し出した。
その手を思ったよりも強い力で引っ張られてもつれた足がふわっと宙に浮いて、再び俺の体を嫌な汗が包む。
ぎゅっと閉じた目を薄く開けて、視線を肩から指先へゆっくりと移す。
その先には思った通り、相棒の十四松。
十四松の俺を引くのとは逆の手にはトド松の手ががっしりと掴まれていて、トド松は青い顔をしている。
そんな俺達に冷静に「30分後に大きなツリーに集合しろよ!」と言うチョロ松兄さん。
突っ込もうと思ったら既に小さくなってしまった上三人の兄。
カラ松は俺の手を取ろうとしたのか力なく右手を上げて固まっていた。
二人きりにしてもらえるのかなと期待していたので少し残念に思いながらも、弟達と楽しく過ごせる時間も、まぁいいのかなと流れるイルミネーションを眺める。
だけど、その光の中についついカラ松を見てしまう自分が居てなんだか集中できずにいた。
すると突然十四松が足を止め、宙に浮いていた俺とトド松は地面に叩きつけられる。
「「痛゛っ!!!」」
十四松の目にはイルミネーションではなく店のランプが写っている。
その店には見慣れたロゴがあった。
「何、十四松、スタヴァーに行きたいの?」
「うんっ!一松兄さん、トッティー、あれ飲もう!!」
十四松の指さす先にはクリスマス限定のメニューのポスターがあった。
俺とトド松は体の砂埃をはたいて十四松の手を引いて入店した。