第18章 二人きりのクリスマス(クリスマス)
「たまたま俺のになったからよかったけどさ、やっぱり赤と言えば俺の色じゃん?」
トド松の顔を覗き込むとなんとなく赤いし、挙動不審だ。
分かりやすい弟に少し意地悪したくなってさらに追い詰めてみる。
「ねぇ、もしかしてコレ・・・俺の事思って選んでくれたの?」
「はっ、はぁ!?」
突然大きな声を上げて立ち上がったトド松にみんなの視線が一気に集中する。
「どしたの、トド松ぅ~?」
にやにやと下からのぞき込むと不貞腐れた顔でドスンと座り直したトド松は完全に俺に背を向けてしまって、俺の問いかけに一切答えてくれなくなってしまった。
まぁ、いっかと古い財布を少し名残惜しみながらもゴミ箱に入れたところでカラ松が立ち上がった。
「一松、外に行かないか?」
その声に兄弟と父さんと母さんの視線が集まる。
そして、案の定父さんと母さんに突っ込まれた。
「お前達二人で出かけるなんて雪でも降るんじゃないのか?」
「どうせ喧嘩して人様に迷惑かけかねないんだから黙って家に居なさい!」
「そうだ、母さんの言うとおりだ、カラ松が怪我するならいいけど他の人に何かあったら大変だ!」
「そ、そんな~」と身動き取れなくなったカラ松の袖をチョロ松が勢いよく引いて畳の上に伏せさせると、ゴツンと頭を小突いた。
「い゛だっ!」
「ちゃんと後先考えろよ!頭空っぽカラ松!」
「ど、どういうことだ?」
涙目で頭をさするカラ松。
「もともとお前達犬猿の仲だったんだからああやって心配されるのは当たり前でしょ?それに一松の身にもなりなよ!!」
チョロ松の指さす先には俺達に背を向けてうずくまる一松が居た。
よく見ると耳は真っ赤だ。
カラ松と一松が付き合っているという事実を知る俺達の前で、あからさまに外に呼び出された事がよほど恥ずかしかったらしい。
「カラ松兄さん、僕達に任せて♪」
小声でそう言うトド松はチョロ松と一松を連れて台所に向かった。
今日何度目になるかわからない父さんと母さんの驚く声の後、三人が大きなクリスマスケーキを持って現れた。
「じゃじゃ~~~ん!僕達特性のクリスマスケーキだよ~♪」
フルーツのたっぷり乗った白いケーキをチョロ松が切り分け、皿に乗せる。
それをまずは父さんと母さんに一松が配った。
「め、メリークリスマス・・・シメのケーキだよ」