第17章 初めてのクリスマス(クリスマス)
まだ明るい夕方。
俺と十四松は早めに帰宅した。
玄関を開けると、相変わらず我が家は美味そうな匂いに包まれていて、今度は何やら居間の方が騒がしいようだ。
俺と十四松は「ただいま!」と帰宅を告げて靴を脱ぐ。
すると居間の襖が開いてチョロ松が顔を出した。
「お帰り!丁度良かった、手伝ってよ?」
俺と十四松は顔を見合わせて首をかしげたが、チョロ松が手招きするのでとりあえず居間に向かう。
敷居をまたぐと、そこはうちの居間なのかと疑うほど見違えていた。
部屋の中心にある炬燵の上にはこれまた我が家の夕飯とは思えない食事が並んでいる。
「わ~~~!これ、三人が作ったの!?すっげぇ~~~~!ローストチキーーーン!」
十四松は子供のように炬燵の周りを動き回り、大きな口を開けて豪華な夕飯をまじまじと見ている。
皆がそろう前に十四松に食べられてしまう事を心配したのかトド松は十四松を落ち着かせようと必死になっている。
そんな二人のやり取りをニコニコと見守りながらチョロ松がクリスマスの飾りを一松に渡した。
「ねぇ、カラ松、天井にこの飾りをつけたいんだけど、一松を肩車して飾り付けしてくれない?」
「ああ、いいぞ」
俺は一松の前にしゃがみ込んだ。
すると一松が飾りをくしゃっと握り締めてチョロ松に抗議する。
「はぁ!?何で俺なの?チョロ松兄さんがやればいいじゃん?十四松が下とかさ!」
「い、いちまぁ~つ、それは俺に失礼じゃないのか?」
一松はふいっと俺から顔を逸らした。
しかし、よく見ると頬と耳がピンクに色づいていて、愛おしく感じた。
俺は今夜の二人きりの時間をより特別に感じられるだろうと思い、一松を持ち上げる役を十四松に譲るとする。
「十四松、お前は放っておいたら先にクリスマスディナーを食べてしまいそうだ。一松が天井を飾り付けるのを手伝ってやってくれ」
「あいあいさーーー!」
トド松と一松がほっと息をつき、それをチョロ松が眉を下げて微笑んで見つめていた。
俺もその光景を微笑ましく眺める。
その中心に並ぶ色鮮やかでうまそうな食事を一松が作ったのかと思うと、何だかたまらない気持ちになった。