第3章 勇気
カラ松side
昼間、白猫の死骸を見つけてしまった。
その所為か、一松の寝息が寝付いて直ぐに途切れ始めた。
またか・・・
予想はしていたが例の夢を見ているようだ。
俺は一松をこちらに向かせると抱きしめるようにしながら背中を擦る。
「大丈夫、大丈夫だ・・・一松、大丈夫だ」
すると、いつもはそのまま眠り始めるのだが今日はどういうわけか目を覚ましてしまった。
一松としっかり目が合う。
だけど、涙と暗闇に目が慣れていないのとで視界がはっきりしていないのかこちらを見ながら寝ぼけ眼で瞬きを繰り返す。
その顔があまりにも可愛くて俺もつい見惚れてしまっていた。
そうこうしていると、やっと視界がはっきりしたのか一松の表情が驚いた顔になる。
「フっ・・・こうしているのを見られるのは初めてだな?」
そういうと更に驚いた顔をする。
いつもとは違い素直に反応する表情が可愛くて、もっと反応が見たくなった俺は続ける。
「知らなかったか?お前がうなされる度に俺はこうやってお前を導いていたんだぞ?・・・まぁ、前回は気づけなかったようだが」
「今まで・・・ずっと?」
「ああ、そうさ」
今度は驚いたようなでもどこか嬉しそうな表情。
「な、何で・・・」
今度は切ないような嬉しいような表情。
百面相する一松に嬉しくなった。
と同時に困ってしまう。
押してばかりはいけない・・・
「そんなに不思議か?」
そう思っていたのに
体が勝手に動きだし口は勝手に本音を紡ぐ。
俺は胸にぴったり一松の体を寄せる。
「好きな人が苦しんでいるのに放っていられるわけがない」
「お前のそういう兄弟愛っていうの?暑苦しいよ」
「一松、お前は何か勘違いしていないか?」
逃げようとするような一松の台詞。
でも、暗闇でもわかるほど紅潮する顔で言われても何の説得力もなかった。
むしろ・・・
「俺の言う好きは・・・」
「やめて・・・」
「やめない」
俺のブレーキを壊していくだけだ。
「俺は一松を一人の男として・・・愛してる」
言ってしまった。
一松はただただ泣いていた。
でも、後悔はしていない。
拒否はされなかった。
俺は待ってるぞ、一松。
お前が俺の手を取ってくれる日を・・・