第17章 初めてのクリスマス(クリスマス)
その話を聞いてごちゃごちゃとしていた思考がすっきりとしていく気がした。
「なんとなくわかってくれた?」
「うん・・・多分」
「じゃあ、今日見た中で気になったものある?もしくは、一松兄さんが夢見るカラ松兄さんとの未来」
俺は目の前の雑貨屋のずっと先を見る様にして、これからのカラ松との事を想像した。
「二人暮らしするのかな・・・と・・・か?」
「うんうん」と頷いたトド松は、そこまで言って固まってしまった俺の想像を膨らますように短く質問を繰り返した。
「キーケースとかいいかもね。お仕事は?」
「カラ松かな?俺は家事・・・」
「だったら少しお高い財布とか?休日は?」
「家でゴロゴロしたり、猫に会いにいったり、ご飯の買い出しいったり・・・たまには特別なことしたり?」
「お揃いの部屋着とかいいかも!特別な事って?」
「旅行とか、少し遠出するとか・・・」
「今、一松兄さんが想像してるのは冬?」
「うん」
「寒いね?」
「でも・・・」
そこまで言いかけて慌てて口を押えた。
寒いけど、カラ松が温めてくれるから暖かいなんて誰かの前で口にしたら顔が燃えてしまう。
でも、時すでに遅しで、トド松は足をぱたぱたと揺らしながらにこにこと俺の顔を覗き込んでいた。
「一松兄さん、今日見ていて気になったものは無いの?」
「う、うん・・・」
俺はトド松の視線に落ち着かなくて視線を逸らしながら、今日見て回ったものの記憶をたどる。
「猫のマグカップと猫のイヤーマフと・・・あ」
俺は自分が欲しいと思った物しか言っていない事に気がついて、慌てて口をつぐんだ。
「いいんじゃない?」
てっきり怒られると思っていたのできょとんとした顔でトド松を見やった。
「お揃いで買ってさ、マグカップなら二人きりの夜を過ごしたいなとか?イヤーマフならどこかへ連れ出してってメッセージを添えたら、カラ松兄さんの望み通り二人きりの夜もプレゼントできるよ!」
自分にはハードルが高すぎる未来を妄想して顔がボフンと音を立てた。