第17章 初めてのクリスマス(クリスマス)
歩みを止めたトド松の前には大きなデパートの自動ドアが他の客を招き入れるために開閉を繰り返す。
早くと言っているのか、何やら言いながら手を振るトド松。
俺は仕方なく小走りでトド松のもとに向かった。
店内に入ると暖かさと、コーヒーの香ばしい香りが俺達を包んだ。
香りに誘われ目をやると、そこにはコーヒーを売りにした喫茶店があった。
「一松兄さん、コーヒー飲んで温まらない?」
「うん、いいね」
レジに置かれたメニューを見てみたけど、コーヒーの名前なんて言われてもよくわからない。
何が良いかと聞くトド松に同じのでいいよと言って、俺は席を探しに向かった。
店の隅にあった二人掛けの小さなテーブルに外したマフラーと手袋を置いて、トド松のもとに戻った。
丁度コーヒーを受け取ったトド松が片方を俺に渡してくる。
それを受け取って、手を温める様に持った。
そして、レジ横のカウンターで砂糖を多めに入れて、確保しておいた席にトド松を案内する。
席に座ると、トド松がマフラーと手袋を外し終えたのを確認してカップに口をつける。
だけど、唇に迫ったコーヒーの熱気から、これは猫舌の自分には無理な熱さだと察して、いったん飲むのをあきらめた。
先にコーヒーを飲んだトド松はおいし~と片手を頬に当てていた。
十分ほどして店を出た。
デパートなんてめったに来ないのでトド松の後をただ付いて回った。
服やアクセサリーや雑貨、いろいろと見て回るけどピンとくるものは見当たらない。
俺は歩き疲れて、通路脇にあるソファーにボフンと腰を下ろした。
その音に振り返ったトド松は困った様に笑って俺の隣に同じように腰を下ろした。
「一松兄さん、難しく考えすぎじゃない?」
「難しいんだから仕方ないでしょ」
トド松は少し考えたそぶりを見せて、目の前の雑貨屋を指さす。
「例えばあのエプロンをプレゼントするとするじゃない?」
トド松が指さしているであろうスカイブルーのエプロンを確認して頷く。
「一緒に料理したいなってメッセージカードを添えれば二人で楽しく台所に立つ未来が見えてくるでしょ?」
俺はなるほどとこくこくと頷いた。
それを見て、トド松はさらに続ける。
「逆に、二人で色んな所に行く未来を夢見てるとするじゃない?それなら、お揃いの歩きやすい靴をプレゼントするの」