第17章 初めてのクリスマス(クリスマス)
ゆっくり歩いていたけど、結局荷物を置きに行っただけのはずのトド松は出てこない。
俺は一度家に入ってしまったら出るのが辛くなることを見越して、相変わらず白い息を吐きながら、体を震わせ寒さをしのいでいた。
中の様子をうかがい知ることはできないが、二階の窓を見上げる。
「くっそ、トド松のやつ何やってんだよ・・・」
すると、玄関扉のガラスの向こうにベージュとピンクの色合いの人影が見えてトド松が来たことを悟る。
直ぐに勢いよく玄関が開いて、後ろ手に玄関を閉めながらトド松が「ごめん、一松兄さん」と悪びれた様子はないけど、片目を瞑って手を合わせた。
「後でスタヴァー奢ってよね」
「一松兄さんの為に頑張ってる僕にたかる気!?」
信じられないと騒ぐトド松の後を追って、再び歩き出す。
「で、何してたの?」
「うん、カラ松兄さんと話してた」
カラ松が起きていたと知って今、いったい何時なのだろうとなんとなく思って時計を探して見回した。
丁度通りかかった喫茶店の中に目を凝らすと時計があって、針が重なり合っているのが見える。
十二時か・・・いつもより早めに起きたんだなと共にいられない事を少し寂しく思った。
「丁度十四松兄さんもいたから、二人に聞いた方が自然だと思ってクリスマス欲しい物無いか二人に聞いてみたんだけど、十四松兄さんはバットとボールで、カラ松兄さんは・・・」
俺は何故か緊張してごくりと唾を飲んで、トド松の言葉を待った。
「一松兄さんと二人きりの時間・・・だって」
「は?・・・は?え?」
俺は赤くなる顔を隠すのも歩くのも忘れて立ち尽くした。
そんな俺に呆れた顔をしたトド松がカラ松の台詞を繰り返す。
その声を遠くに聞きながら、心の声が騒ぎ立てた。
『何なのあいつ!?俺との時間!?そんなのいくらでもくれてやるよ!なんだよ、なんなんだよ!格好良すぎるんですけどぉおおおおお!?神か!?神なのか!?もう、好き!!好き好き好き好き好きだよおおおっカラ松うううううう!!!』
はっと気づいた時には俺を取り残して、トド松はだいぶ先を歩いていた。
俺はまたゆっくりと歩みだす。
二人きりの時間か・・・
いいなとは思うけど、今更皆になんて言って出かけたらいいの?
めちゃくちゃ恥ずかしいんだけど・・・