第17章 初めてのクリスマス(クリスマス)
教室に入ると暖房で温められた空気が手足や鼻先をジンとさせ、徐々に温められていく。
ほっと息をついて、コートとマフラーを荷物とともにしまって、エプロンを被った。
すると、既にエプロンを付け終えたトド松が俺の後ろに回って紐を結んでくれる。
礼を言うとトド松はどういたしましてとにこりと微笑んだ。
そして、丸椅子に腰かけると俺もトド松もホワイトボードに目をやる。
「クリスマスディナーだって!」
「俺達には縁ないね」
するとトド松が大袈裟に「はぁ!?」と声を上げて立ち上がった。
そして、俺の両肩を掴んでガクガクと揺さぶる。
「それ、本気で言ってる!?も、ももももしかして一松兄さん、カラ松兄さんにプレゼント考えてないとか言わないよね!?」
「え?考えてるけど・・・今年もやるんでしょ?プレゼント交換」
そう言って首をかしげると、トド松は盛大な溜息を吐いて、頭を抱えて座り込んだ。
そしてしばらく頭を抱えたままボソボソと何かを言っていたかと思ったら、がばっと顔を上げて再び俺の両肩を掴んできた。
「一松兄さん!」
「な、何?」
「料理教室終わったら買い物行くよ!!」
「え!?やだよ、こんなに寒いのに!」と言いかけた僕に刺さらんばかりの視線が向けられて、思わず首を縦に振った。
そして、もう一度ホワイトボードに目を向ける。
クリスマスかぁ・・・
この一か月、カラ松と過ごす時間なんてほとんどなくて、早くこんな時間終わらないだろうかと言う事ばかり考えていたからすっかり忘れてしまっていた。
カラ松の事だ、サプライズとか格好いいなんて考えてそうだ。
・・・してくれるのかな?
こんな風にカラ松も何か期待しているかもしれない・・・
そう思うと、急に心の中に焦りが芽生えた。
サプライズなんてしたことない・・・
ましてや本気でプレゼントなんて考えたことない。
カラ松が欲しい物って何だろう・・・
クリスマスまであと一週間。
俺は教室の隅に置かれてある大きなツリーをぼーっと眺めていた。