第16章 写真
一松side
「ホモ松兄さん達、カメラ屋さんから電話着たよ」
路地裏から帰ると丁度受話器を置いたトド松が言う。
俺はそこでハッとしたが手遅れだった。
「カメラ屋さん、二つとも現像できましたって言ってたけど・・・カメラ向こうで買い足したの?」
カメラとは、以前俺とカラ松で温泉旅行に行った際、トド松と十四松が持たせてくれたカメラの事だ。
実は、その旅行の際、俺はカラ松に内緒でカメラを購入し、こっそり現像に出していた。
俺はとりあえずその場を離れようとカラ松の袖を引っ張って、再び外に出た。
写真を受け取った後、どうごまかそうかと焦る気持ちで一杯で、俺はカラ松の袖を引いたままぐいぐいと先を歩いていた。
「お、おいっ一松!?」
「え?あ、ごめん」
カラ松の声でハッとして、カラ松の袖を離した。
「大丈夫か?どうかしたのか、一松?」
「いや、別に・・・寒いから早くいこ」
そして、写真屋で写真を受け取り、帰路に就く。
心中穏やかでない俺の横で、袋の中を覗きながら楽しそうに話すカラ松。
だけど、その話も今の俺の耳には何一つ届かなかった。
あの時は後の事なんか考えずにカメラなんて買っちゃったけど、よくよく考えればこうなることは目に見えていたことだ。
「おいっ、一松!!」
「は、はひっ!?」
突然カラ松に大声で呼ばれて、返事した声は間抜けに裏返った。
「聞いているのか?」
「ご、ごめん・・・写真のこと考えてた。えっと、何?」
「もう一つの写真は誰のだろうな?」
「さ、さぁ?袋に名前書いてないの?」
現像に出したのは自分なのでわかっているけれど、袋を確認するよう促した。
「マツノとしか書いていないなぁ~」
「ま、あとで聞いてみよ」
「そうだな」
家に帰りつき、玄関を開けると幸い誰もいない様だった。
二階に上がり、俺はさりげなくカラ松に手を差し出す。
「その写真、俺が誰のか聞いて渡しておくから」
「そうか、それなら頼むぞ」
俺は写真の入った紙袋を受け取ると自分の引き出しにしまってほっと息をついた。