第15章 スイートよりビター
おそ松兄さんが投げ出した封筒からバサッと見慣れないものが飛び出して俺達は言葉を失った。
「なっ・・・」
「うっそ・・・」
「まじかよ・・・」
「あはーーーー」
封筒の中から出てきたのは、俺達ニートには到底手にすることのできない諭吉の軍勢だった。
「流石に泥棒はヤバイって!」
涙目のトド松がおそ松兄さんの服の裾を引く。
チョロ松兄さんは軽蔑の眼差しをおそ松兄さんに向けていた。
十四松は床に両手をついて、万札に鼻を寄せると「本物っ!」と叫び、俺の背に隠れた。
「お前等さ~、俺にどんなイメージ持ってんの!?どんなに金に困ってもそんなことしないから!ホント、失礼しちゃうよ~、いらないならいいよ!」
不貞腐れた顔をして封筒におそ松兄さんが伸ばした手をチョロ松兄さんが弾いた。
「ったいな!何すんだよ、シコ松!!」
「シコ松でも何でもいいよ、本当にこれ、如何わしいお金じゃないの!?」
「あったり前だろ~?」
おそ松兄さんは片目を瞑ると得意げにクイックイッと、手首を捻って見せた。
「俺、ついにカリスマレジェンドになっちゃったかも~」
「パチンコ!?」
俺は思わず声を上げた。
トド松も思わず立ち上がっておそ松兄さんをビシッと指さして「他の兄弟ならまだしも、おそ松兄さんがこんな大金、兄弟に差し出すなんて、ぜぇええええええったいにありえない!!!」と言って、今度は札束を指さした。
俺と十四松は天と地がひっくり返るとかなんとか言って、慌てて押し入れに頭を突っ込んだ。
チョロ松兄さんは茫然と札束を見つめていた。
「う、ううん~~~~」
と、この部屋の緊張を一気に崩す間抜けな唸り声が響いて、しらけた俺達は、その唸り声の主に視線をやる。
のっそりと起き上がり、頭をぼりぼりと掻くカラ松が「お前たち五月蠅いぞ」と眉間に皺を寄せていた。
そんなカラ松の胸ぐらをトド松が掴みあげる。
目を点にするカラ松に、トド松は構わずたった今起きている事を説明した。
カラ松の寝ぼけた顔が一気に冴えわたる。
「カラ松ぅ~、お前もそんな顔するわけ?」
「お、おそ松、千円の軍資金でこれだけ勝ってきたのか!?」
おそ松兄さんとカラ松を除く兄弟は、「そこじゃねーよ!」と言いかけて一瞬固まった。
「えええええええええええええええええええ!!!?」