第15章 スイートよりビター
そこで「一松を不安にさせるなよ」と言うカラ松の拳が俺の脳天めがけて落ちて来たのを予め予想していた俺はひょいっと交わして続けた。
「初めは酒に酔ったのかなって思ったんだけどさ、そんな感じじゃなかったんだよね〜。ああやってたまに頼って来られると一松も可愛いとこあるんだなって思ったよ」
すると、今度は予想していなかった衝撃が脳天を襲った。
「って〜!何すんだよ、カラ松!」
キッとカラ松に振り返ると、カラ松も眉をキリッと釣り上げていて少し驚いた。
「おそ松、一松は渡さないぞ!」
「は?何でそんな話になるの?俺の言う可愛いは弟として!一松とキスするとかセックスするとかあり得ないから!」
「ならいいんだが…で、兄貴は何て答えたんだ?」
カラ松の顔を見ると心底気になっていると書いてあって少し笑えた。
「気になる?」
「そ、そりゃあまぁ…」
「カラ松の事も自分の事ももっと信じてやれって言った」
カラ松はよくわからないという顔をしている。
「だって、カラ松の愛情を受けてる本人がカラ松の想いは一番わかってるはずだろ?」
「おそ松・・・」
カラ松は頗(すこぶ)る嬉しそうな顔をした。
「兄弟のしかも男のカラ松をそこまでメロメロにした自分にも自信持てって」
すると、俺と身長は変わらない筈なのに、俺よりもでかい図体で俺に抱き着いてくるカラ松。
俺は勢いで後方にぶっ倒れた。
そこでスッと襖が開いて、チョロ松とトド松とがっちり目が合う。
「あんた等何やってんの?」
「い、いやっ、違うんだって!チョロま」
パタン!
弁解も聞いてもらえず襖は閉ざされた。
「おいっ!どうしてくれるんだよ、カラ松!」
「すまない、そんなつもりは・・・」
俺達はしばらく、チョロ松とトド松に冷たい視線を向けられることになった。