第15章 スイートよりビター
「ま、そんな気にしなくていいんじゃない?一松も何も言わないんでしょ?俺の勝手なイメージだし」
そう言ってやったけど「う~~~ん」と顎に手を当てて唸っているカラ松に、この際だから色々聞いちゃおうと思って質問する。
「お前、一松のどこが好きなの?」
カラ松は「うん?」と天井から俺に視線を移す。
「可愛い所だろうか?」
「可愛い!?あいつが?」
俺は思わず噴き出した。
普段の一松を思い浮かべ、いったいどこにそんな要素があるんだと首を傾げた。
そんな俺にカラ松は続ける。
「一松は恥ずかしがり屋さんだからな、お前達兄弟には見せない恋人の俺だけが知る一面があるのさ!」
自慢気に鼻を鳴らすカラ松。
以前、兄弟の知らない部分を一日の間に沢山見てショックを受けたことがあったけど、そんなのがまだあって、しかもそれを長男の俺を差し置いてカラ松が知っているという状況に少し嫉妬みたいなものを感じた。
「お兄ちゃん結構お前達の事はよく見てるつもりだよ?」
「ノンノンノン、おそま~つ、確かにそうかもしれないが一松の事だけはいくら兄貴でも負ける気はしないぜぇ?」
人差し指を振って、片目を瞑るカラ松に意地悪のつもりで問う。
「例えば?」
すると、カラ松は嬉々とした表情で話し始めた。
今朝、カラ松の胸に頬を摺り寄せてたとか、カラ松以外を入れるのを嫌がった話とか二人きりで飲んだ時にカラ松にドキドキしてるとか本音をぶちまけた話とか、挙句の果てには、俺だけが知っていると思っていた一松の猫化も知ってて、しかも猫化しかけた一松とやった話までされた。
俺が知らないどころか兄弟の誰も想像しないだろう、一松には似つかわしくない内容だった。
それはもう・・・
「その辺の女の子よりも乙女じゃん・・・」
「ふふ~ん、そうだろう?」
俺は無駄に張り合ってしまったことに力が抜けたようになって、カラ松の横に大の字になって寝転んだ。
「そういやさ、前に一松から相談されたんだ」
カラ松は驚いたように俺を見やる。
その表情から自分が何かしたんじゃないかと心配していると思ってそう言うんじゃないととりあえず前置きしてやる。
「素直じゃない一松に俺が可愛くないって言ったんだ。それを気にしてだと思うんだけど、こんなんじゃカラ松に嫌われるかなって・・・」