第15章 スイートよりビター
一松side
目を覚ますと、目の前にカラ松の厚い胸板があった。
久しぶりの目覚めの景色に思わず頬が緩む。
時計を見ると朝の7時だった。
まだ退室時間まで余裕がある。
そう思って、カラ松がまだ間抜けに大口を開けて寝息を立てているのを確認すると、目の前の胸板に頬を摺り寄せた。
ドクンドクンッと規則正しく鳴っているのが、間違いなくカラ松がここに居ると強く感じられて安心した。
「カラ松・・・」
「どうした、いちま~つ」
俺は返ってくる予定の無かった声に肩をびくりと震わせて慌てて見上げた。
そこには目を閉じて眉間に皺を寄せ、顔を真っ赤にしているカラ松が居た。
「て、てめぇ、起きたら起きたって言え!!」
「あうちっ!」
カラ松は俺の拳が顔面にメリ込んだ痛みから涙を流して、先ほどとは違う赤みを帯びた鼻頭を押さえた。
「もう少し寝ててよ」
そう言って、俺はもう一度カラ松の胸に顔を埋めた。
さっきよりも煩い音が俺の肌に伝わってくる。
俺はカラ松に見られないように微笑んだ。