第3章 勇気
その日の夜、俺は眠れずにいた。
というのも路地裏に行ってそこから餌を買いに行く途中、道路に横たわる白猫の死骸を見て昔のことを思い出してしまった。
何度も眠りにつくため目を瞑るがどうしても瞼の裏側に映像が映し出されるがごとくあの日のことがフラッシュバックする。
だけど、体が限界を迎えたのかいつの間にか夢の中だった。
俺はあの基地に餌を持って行く。
そうして俺は夢の中であの日を繰り返す。
三匹の亡骸の入った段ボールを抱える俺にあいつらが罵声を浴びせる。
『お前、邪魔なんだよ』・・・ごめんなさい
『消えろ』・・・やめて
『大丈夫』
『めざわり』・・・やめてっ
『大丈夫だ』・・・誰?
『キモっ!』・・・お願い、やめてよ!
『死『一松、大丈夫だ』・・・カラ、松・・・?
俺は顔を上げた。
寝起きなのと涙と暗いのとで前がよく見えない。
目を擦ろうと思ったら大きな暖かい手が俺の涙を拭う。
次第に暗闇に目が慣れてくる。
すぐそこに優しい顔をしたカラ松がいて、俺を優しく抱きしめていた。
「フっ・・・こうしているのを見られるのは初めてだな?」
え?・・・こいつ何言ってんの?
「知らなかったか?お前がうなされる度に俺はこうやってお前を導いていたんだぞ?・・・まぁ、前回は気づけなかったようだが」
すまないと言いながら頬をポリポリと掻くカラ松をただただ驚いて見ていた。
「今まで・・・ずっと?」
「ああ、そうさ」
カラ松は夢の中のあの声と同じく優しい声で答える。
いつも大丈夫という声に助けられていた。
あの声に安心すると悪夢は自然と消えた。
なぜ、今まで気づかなかったんだろう?
「な、何で・・・」
俺はあんなに酷い態度をとってきたっていうのにこいつは今までずっと俺を守ってくれてたの?
そんなことしてこいつに何の得があるっていうんだ?
わからないことだらけで混乱した。
そんな心境が表情に出ていたのかカラ松は少し困った顔をしている。
「そんなに不思議か?」
俺はコクリと頷いた。
すると、ふわりとカラ松の胸に収められる。
俺の心臓がドクドクと高鳴った。
俺はいつものように悪態をつくことも攻撃することも忘れ、カラ松の言葉を待った・・・
「好きな人が苦しんでいるのに放っていられるわけがない」