第3章 勇気
5月××日
一松side
ここ一ヶ月くらいカラ松が物凄く絡んでくる。
殴っても罵っても懲りずに何度も絡んでくる。
だからか、最近はネコの餌を買いに行くときは荷物持ちにあいつもついて来るようになった。
今日は丁度ネコ缶が切れる日だ。
ほらね、来た。
「一松、今日は猫の餌を買いに行く日だろう?荷物持ちについていくぜ」
「ホント暇人だよね。毎回毎回荷物持つ為だけについてきて・・・俺に利用されてるだけなのわかってる?」
俺の口は相変わらず思ってもいない言葉をぺらぺらと紡ぐ。
その度自分にうんざりして舌打ちをして俯く。
きっとカラ松は自分に対しての舌打ちだと思っているんだろうな・・・
でも、やっぱりお前は懲りずに手を差し伸べてくる。
「利用されているのか?まあ、俺はそれでも構わないがな!お前のキューティーハンドを守れるならそれでいい!マイリルいちまぁつ俺と共に愛を語らっ」
「それ以上喋るなクソ松!お前のモノになった覚えはねぇんだよ」
俺はカラ松の胸倉を掴んでその恥ずかしい台詞を言うのを止めさせて立ち上がった。
そして無言で財布と残りのネコ缶と煮干しを持つと家を出た。
その後をカラ松はにこにことついて来る。
これが最近では恒例になっている。
俺はひそかに猫の餌を買いに行く日が楽しみになっている。
でも、辛くもある。
その手を握りたい。
でも、握ってしまったら今度は離れる恐怖に苛まれるかもしれない、カラ松を不幸にするかもしれない。
そうやって葛藤しなくてはならないから・・・
俺はもう一歩を踏み出す勇気もなくカラ松の優しさを日々無碍にする。
ごめんね、カラ松。
素直になる勇気が俺にあったらどんなに良かったか
俺達が兄弟じゃなかったら、男同士じゃなかったらどんなに良かったか
好きって言えたらどんなに良かったか
そして、嫌いだって言われてしまえばどんなに楽になれることか
好きだよ、カラ松・・・
お前のことが好きだ・・・