第15章 スイートよりビター
カラ松side
初めてのラブホテルに少し緊張したが、不安がる一松にそんなモノは吹き飛んだ。
いつもはクールな一松が俺の袖を掴んでまるで迷子の子猫のように小さくなっている。
なんてキュートなんだ!
俺は先ほどまでとは違う鼓動を感じていた。
浴室にはそこら辺のホテルよりも充実したアメニティーが並んでいる。
感心しながら一つ一つ見ているとバブルバスの入浴剤を発見した。
一松も緊張はどこへやら、いつもより目を見開いてらんらんと輝かせて泡が立つ様子を見ていた。
これだけでも連れて来た甲斐がある。
俺達は風呂がたまるまでの間、どのようなものがあるのか物色することにした。
とりあえず冷蔵庫を開けてみる。
「空だな」
「でも、上に電子レンジあるしいろいろ持ち込めて良いね?きっとここの物飲み食いしたら高いでしょ?」
そんなやり取りをしながら隣の棚を開けると自動課金式の販売機が入っていた。
中にはジュースや酒が並んでいる。
その小窓に描かれた金額にうわ~と声を上げる。
「一般人には大した差じゃないんだろうが俺達ニートには痛いな・・・」
「うん」
そう言いながらまた次の棚を開けるとまた同じような販売機が入っていた。
しかし、今度はジュースではないらしい。
一松が顔を真っ赤にしている。
一松の顔と販売機を交互に見た後、その中を覗いてみると所謂大人のおもちゃが並んでいた。
中にはストッキングや過激な下着なんかまで売られている。
興味がないわけじゃないが一松の様子を見て、まだ一松には早いと思って静かに扉を閉めた。
ひとしきりそう言った設備を確認したところで風呂がたまったので俺達は風呂へと向かった。
いつも銭湯でやるように二人で背中を流しあう。
一松の体を撫でまわしたいが、一松が楽しみにしているバブルバスを台無しにするわけにもいかないのでぐっと堪えた。
体を流し終え、目を輝かせて浴槽から泡を救う一松。
俺は一松とは反対方向、風呂の扉を開けて脱衣所に身を乗り出した。
そして照明を消す。
「ちょっと!」
声を上げる一松を後ろから抱きしめる。
と同時に浴室が鮮やかに輝いた。
「うわ~・・・」
一松の顔を鮮やかに染め上げる浴槽内のライト。
一松は赤から紫へ紫から青へと浴槽の泡を輝かすその光景に釘付けになっていた。
「どうだ、気に入ったか?」
一松は小さく頷いた。