第15章 スイートよりビター
そして、ライトアップされた建物の前にやって来た。
俺はその建物を見上げて唾をのむ。
「か、カラ松?」
「ん、どうした一松?」
「ここ・・・」
「ああ、ラブホテルだ!ここじゃ不満だったか?」
不満とかなんとかそう言う問題じゃない。
第一、ラブホテルなんて来たことが無いので良いとか悪いとかはわからない。
ただ、もともとそのつもりではあったけど、こういう所に来たイコール『やる』という事だ。
上手く説明できないけど、それが何だか凄く恥ずかしく思えた。
俺は初めてなのと、恥ずかしいのと不安なのとでカラ松と繋いでるのと反対の手でカラ松の袖をつかむ。
するとカラ松は心配するなという様に俺の頭を撫でてきた。
それに少し安心感を覚えてホテルに入り、パネルに映し出された部屋の中から適当な部屋を選び、エレベータに乗る。
すると今度はラブホテルという事よりも、カラ松と二人きりという事に妙に緊張して落ち着かなかった。
エレベーターを降り、ランプの点滅する扉の前で立ち止まる。
カラ松が扉を開けて俺を中へと招き入れた。
スリッパに履き替え、楽しそうに部屋の中を物色するカラ松。
バスルームに向かってしばらくするとカラ松が俺を呼ぶ。
バスルームではさっそく風呂を溜める為、カラ松が浴槽をシャワーで流していた。
浴槽を流し終えて振り向いたカラ松は浴槽の縁に置いてあった二つの袋を俺に見せてくる。
「普通の入浴剤とバブルバス、どっちがいい?」
「バブルバスって泡風呂ってやつ?」
「ああ、そうとも言うな」
「じゃ、じゃあバブルバスで・・・」
映画なんかでしか見たことないバブルバスに正直興味があった。
カラ松はわかったと嬉しそうに言いながらバブルバスの袋を裏返し、説明書きをぼそぼそと読み上げていた。
俺も気になって横からのぞき込む。
説明書きを読み終えたカラ松がバブルバスの入浴剤の封を切って空っぽの浴槽に入れ、勢いよくお湯を出した。
すると見る見るうちに泡立つ。
さっきまで緊張していたことも忘れ、初めて見るそれに俺は子供のように心を躍らせていた。