第15章 スイートよりビター
「カラ松兄さんは自分はホモじゃないって言っていたけど、一松兄さんはどうなの?」
「俺もホモではないよ」
「それじゃあさ、カラ松兄さんにときめくときって格好いいなって思うの?それとも可愛いなって思うの?」
「は?・・・格好、いぃ・・・かな」
一松兄さんは僕の質問にいちいち赤面しながら答える。
そんなに恥ずかしいならいつものように凄んで見せて答えることから逃げたらいいのに・・・
僕の質問は止まらないよ?
「カラ松兄さんのどういうところが好きなの?」
「わかんない」
「それはないでしょ~?十年近く好きな人だよ?」
「ポジティブなとことか行動力あるとことか?・・・俺にはできないし」
「え~、なんかベタ~・・・あ、そう言えば!」
僕はカラ松兄さんが入院した時の事を思い出した。
カラ松兄さんが一松兄さんを傷付けない男になるために生まれ変わることを決心して、一度一松兄さんと別れて、生まれ変わってもう一度告白するっていうイタイ事をやっていたことを・・・
「一松兄さんその時にその告白になんて答えたの?」
すると一松兄さんの顔がみるみるうちに真っ青になって目が泳いで明らかに挙動不審になった。
「一松兄さん?」
心配になって背中をさすると一松兄さんが勢いよく僕の腕を振り払って珍しく声を張り上げた。
「もういいでしょ!結構話したし!」
僕は圧倒されて、つい「はい」と答えてしまった。
一松兄さんの声に驚いたのかカラ松兄さんが下りてくる音がして今度は慌ただしく廊下に出ていく一松兄さん。
階段の下で「部屋に戻れ!クソ松!」と騒ぐ一松兄さんと「痛い痛い!」と足蹴でもくらっているのかカラ松兄さんの痛がる声が聞こえていた。
他にも聞きたい事がいっぱいあったのに聞きそびれちゃったけど、あの様子なら借りが無くても話してくれそうだなと僕は一人ほくそ笑んだ。