第15章 スイートよりビター
「一松、はいこれ」
母さんが小さなメモ紙を手渡してきた。
トド松と十四松が横からそれを覗き込む。
「お買い物のメモよ、お米があるんだけど持てるかしら?」
「母さん、僕が持つから大丈夫!」
十四松が力こぶを作って見せると母さんは「頼んだわよ」と言って台所へ戻って行った。
玄関を出るとトド松が寒いと言いながら俺と十四松の間に入ってきて、それぞれの腕に腕を絡める。
「トド松、歩きにくいんだけど」
「でも、こうやるとあったかいでしょ?ね、十四松兄さん♪」
「うん!でもね、トッティー?こうやるともっとあったかいよ!」
そう言って十四松は俺とトド松を背中合わせでマフラーで一つに縛り上げた。
「ねぇ、十四松、歩けないんだけど」
「十四松兄さん!?」
十四松はにぱっと笑顔のまま俺達をひょいっと高々と持ち上げた。
嫌な予感がして一気に青褪める。
トド松も何かを察したようで震えているのが伝わってくる。
そして俺達は宙を舞った。
一瞬で病院に到着し、暖房の利いた院内で温まることができた。
でも、正直普通に歩いて来た方がよかったと心の中で涙を流した。
病室に行くと、既にカラ松が着替えを済ませて俺達が来るのを待っていた。
「早くブラザー達のもとに帰りたくてな!」
無駄にぎらつかせている瞳に指を突きさしてやった。
騒ぐカラ松を十四松が抱えて俺とトド松で着替えと洗面具なんかが入ったカバンを持つ。
「それだけ暴れられるなら問題ないね♪」
トド松が上機嫌に言う。
俺は問題とは何の事だろうとトド松を見やった。
するとトド松はスマホの画面を俺達に見せてくる。
暴れていたカラ松も目を真っ赤にしながらスマホの画面に目を凝らしていた。
「何?・・・これがどうかしたの?」
スマホの画面には紅葉の綺麗な景色が映し出されている。
トド松はスマホを口元に当てて言った。
「僕が兄さん達を旅行に連れて行ってあげる♪」
「トッティー、ほんと!?」
十四松が抱えていたカラ松を放り投げてトド松に抱き着く。
カラ松は地面にはいつくばって呻いていた。
俺は流石にからかわれるとか気にしていられなくなってカラ松に駆け寄る。
「サンキュー、ハ二ー」
大袈裟に涙を流すカラ松を「はいはい」と軽くあしらって立ち上がるのを手伝いながらトド松に質問する。
「そのお金はどこから来るの?何が目的?」