第14章 熱に浮かされて(バイト編)【紅松】
「あの・・・寒いし、とりあえず炬燵入ろ」
「うん」
一松兄さんの言葉に僕達は居間にある炬燵に向かった。
一松兄さんは僕の隣ではなく僕の向い、いつも十四松兄さんが座っている所に座った。
「俺、バイトの事は十四松に手伝ってって話した以外は話してないから・・・トド松にだけ黙ってたわけじゃないよ」
「うん、いいよ・・・僕だってスタバァでバイトしてたこと黙ってたし」
その会話にチョロ松兄さんが微笑みながら湯気の立つ湯呑を皆の前に並べる。
一松兄さんは一度ホッとした顔をして、湯呑を両手で取り、静かにお茶を飲んだ。
そして湯呑を置くと、湯呑を包む手はそのままに、湯呑の中を見つめながら続ける。
「俺みたいなゴミくずの給料じゃ猫の・・・治療費も賄えない」
一松兄さんの声が微かに震えていて少し驚いた。
「だから、その・・・ちゃんと返すから」
「一松兄さん!」
僕は一松兄さんが何を言おうとしているのかわかって、その言葉を遮った。
あの一松兄さんが弟の僕を頼ろうとしてくれている事が自分でも驚くほど嬉しかった。
そして、それを申し訳ないと思って欲しくないと思った。
「一松兄さん・・・僕たち兄弟でしょ?困ったときはお互い様なんだよ?」
一松兄さんは僕をじっと見つめて一言「ありがとう」と言った。
十四松兄さんもチョロ松兄さんもおそ松兄さんもそれを見て微笑んでいた。
「ニート達ご飯できたわよ!」
そこで台所から母さんの声が聞こえてきた。
チョロ松兄さんが朝食を取に立った。
バイトで疲れている僕達四人はチョロ松兄さんに甘えることにして炬燵で食事が並ぶのを待った。