第14章 熱に浮かされて(バイト編)【紅松】
おそ松兄さんは僕のカバンを取って僕の一歩先を歩き出した。
僕もその後に続く。
おそ松兄さんは僕の事を考えてか、いつもよりスローペースで歩いてくれているようだった。
その背中を登り始めた朝日が照らす。
照り返しがまぶしく感じて少し目を細めて思った。
(おそ松兄さんの背中ってこんなに大きかったんだ・・・)
今まで時々一緒に買い物に出かけてたカラ松兄さんの背中を見てそう思うことはよくあったけど、おそ松兄さんの背中をこうやってまじまじと眺めることはなかったので気づかなかった。
暫くおそ松兄さんの背中を見つめて居たら、先刻に頭を抱き寄せられたり、抱っこされたことを思い出して風邪からくる熱とは違う熱を顔に感じて慌てて目をそらした。
「ぶわっ!!」
そしたら何かにぶつかってよろめいた。
「もーう、トド松どこ見て歩いてんの?」
「ご、ごめん」
どうやら僕はおそ松兄さんにぶつかったらしい。
当たりをよく見るとそこは自分家の前だった。
家に入るといつものようにチョロ松兄さんと母さんの声がして、足音が近づいてきた。
「おそ松兄さん、どこ行ってたの!?」
「ん~?トド松を茶化しに~」
心配していたのか二階から一松兄さんと十四松兄さんも降りてきた。
「茶化す為だけに何時から出かけてんの?俺達がバイト行く前から出かけてるでしょ?」
「え?一松兄さんがバイト!?」
一松兄さんは俯いて黙っている。
僕がムッとしたところでチョロ松兄さんが困った顔をして一歩前に出た。
そして一瞬一松兄さんを振り返って言う。
「俺達も一松の口から聞いたわけじゃないんだ、朝出かけるのを見かけて」
すると次は十四松兄さんが一松兄さんを気にしながら一歩前に出た。
「あのね、トッt」
「十四松っ・・・」
十四松兄さんの肩を一松兄さんの手が掴んだ。
「俺が・・・言う」
十四松兄さんはにぱっと笑って一松兄さんと入れ替わるように後ろに下がった。