第14章 熱に浮かされて(バイト編)【紅松】
一つ口にすると黙っておくつもりだった事も勝手に口をついて出て、気が付けばバイトが始まってからの事、全てを話していた。
そうこうしていたら新たなお客さんがやって来た。
すると、おそ松兄さんが僕をひょいっと抱きかかえた。
「ちょっ、に・・・兄さんっ!?//////」
おそ松兄さんは僕を休憩所に連れて行き、いすを並べてそこに僕を座らせると、抱き着くように僕の背中に腕を回してエプロンを解いた。
僕は慣れない事をされているからかドキドキとしていた。
「どしたのトド松、顔真っ赤だよ?」
「はっ!?ね、熱の所為でしょ?」
「ふ~ん」
そう言いながらおそ松兄さんは上着を脱いで僕の背にかけて、その代りに僕の着ていたエプロンを着ると、きゅるんと目を潤ませて、アヒル口を作って僕の前でくるっと一周した。
「とりあえず、今入ってきた客は任せといて~」
とウインクして店内へ消えて行った。
「レジ打ちできるのかな?」
少し心配になったけどわからなかったら聞きに来るだろうと思って、おそ松兄さんが並べてくれた椅子に横になった。
暫くするとおそ松兄さんが戻ってきた。
「レジ打ちできた?」
「難しい事じゃなけりゃできるよ~?お兄ちゃん舐めないでよ?前にさ、一松達と一時間交代でラーメン屋で働いた時にレジ打ちやったからなんとなくわかったよ」
それからも通常のレジ打ちしかなかったようで特に問題もなかった。
廃棄のお弁当の回収や陳列、調理の仕事は一つ一つ口頭で指示をして、何とかその日を乗り切った。
朝勤の人がやってくる少し前におそ松兄さんは上着とエプロンを入れ替えて帰って行った。
初めにおそ松兄さんが貼ってくれた熱さましシートはすっかり僕の体温に温められてしまっていたけど、その分僕から熱を奪ってくれたようだった。
途中、おそ松兄さんが栄養ドリンクも差し入れてくれたんだけど、それの効果か体も少し軽くなっていた。
終業まで残り三十分、僕は何とかやり遂げて、やっと帰路に就く。
コンビニを出て少し大きめの駐車場を出て、曲がった時だった。
そこにあった看板の後ろから白煙が上がっていて、僕は足を止めた。
そして看板の下に目をやると、看板を支える足の向こうに赤いすスニーカーが見える。
「おそ松兄さん?」
「一緒に帰ろうぜ?」
看板の後ろから姿を現したのはやっぱりおそ松兄さんだった。