第14章 熱に浮かされて(バイト編)【紅松】
おそ松side
トド松はさっさと食事を済ませるとおやすみーと言って二階に上がって行った。
その背を見送った後、疑問に思っていた事を兄弟に聞く。
「トド松さ、何で睡眠時間二回に分けてるの?」
トド松は朝食と夕食の後の二回に分けて睡眠をとっていた。
チョロ松は「あぁ」と言いながらわざわざ箸を置く。
「銭湯とかご飯とか皆と一緒に取りたいんだって」
「はぁ~?何で?」
「僕もトッティーと一緒が良いよ!みんな一緒!」
一松が十四松の頭を撫でた。
「トド松も甘えん坊だねぇ~、俺は一人でも別に何とも思わないけど」
するとチョロ松がそれはそれでどうなのと冷たい視線を向けてくる。
俺は「お~怖っ」と、残りのご飯をかきこんだ。
食事の後、十四松は野球に、チョロ松と一松はカラ松の見舞いに出かけた。
俺は軍資金無いし、チョロ松に見舞いに誘われたけど面倒だし、家で大人しくしておくことにした。
二階に上がると、ソファーでトド松が寝息を立てていた。
掛けていたであろうタオルケットがソファーの下に落ちていて、トド松は小さく丸まっていた。
「しゃぁねーなぁー」
俺は落ちているタオルケットを拾ってトド松に掛け直した。
しばらくすると温まったのか寝返りを打って丸めた背を伸ばしていた。
横になって雑誌を読む俺を睡魔が襲う。
実は十四松と交代で一松のバイトを手伝っていて、今日がその日だった。
うとうとしていると、ぐずぐずと鼻を啜る様な音が聞こえて起き上がった。
やはりトド松は風邪を引いたんだろうかと様子を窺いに立つ。
「トド松?」
トド松の閉じられた瞳の端から一筋の光が伸びていた。
程なくしてその筋の上を新たな雫がなぞっていく。
・・・泣いてる?
しかし、トド松は寝ているようだ。
何か夢でも見ているんだろうか?
トド松の事だから怖い夢でも見てるのかもしれないと思って起こしてやる事にした。
「おい、トド松!トド松ぅ~?」
ペチペチと顔を叩いてやるとキュッと顔を顰める。
その顰め方はもう、染み付いてしまっているのかあざとい。
何だか腹が立ってもう一発強めに頬を叩いた。
「いった!」
するとトド松が飛び起きてきょろきょろと部屋を見渡した。
「あれ・・・夢?」
「どったの、トド松ぅ~?」
俺から涙を拭われて初めて自分が涙を流していた事に気づいた様だった。